平成242012)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

24−共研−2099

分野分類

統計数理研究所内分野分類

j

主要研究分野分類

8

研究課題名

日本における数理統計学の受容・波及過程に関する予備研究

フリガナ

代表者氏名

タケウチ ヨシユキ

竹内 惠行

ローマ字

Takeuchi Yoshiyuki

所属機関

大阪大学

所属部局

大学院経済学研究科

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

59千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

[研究目的の概要]
本課題は、日本における数理統計学の定着と、経済学、工学、生物学などの応用分野への普及がどのようにしてなされてきたか、その変遷を文献資料と関係者の証言から構成し、明らかにする調査研究を設計・試行することを目的としている。(数理)統計学は他の諸科学に比べると、比較的新しい学問分野であるため、その発展過程に対する歴史的考察は極めて少ない上に、欧米に比べても日本の研究は遅れている。そのため、高齢化した関係者からの証言取得が不可能になる前に、そして文献資料の散逸が進む前に、事実関係の一定の集約を行い、日本における数理統計学の導入と発展の整理的記録とそれに関する一次資料を作成することが急務である。だが、こういった調査研究は対象が多岐多様にわたっているため、構造化、体系化しないままであると、断片資料の塊になってしまう怖れがある。そこで、本課題ではどのような構造化、体系化が可能であるか、調査対象の選択を含めた検討を行う予備的研究を行う。
 統計学の進展や周辺諸科学への影響過程については、欧米の一流学術雑誌や統計に関連する学会が率先して第一線を退いた統計学者達の証言を残し、資料化している。しかし、日本においては、わずかに佐藤良一郎氏、森田優三氏、北川敏男氏(いずれも故人)など数名の統計学者が回顧録を出版している他に公刊されている証言資料は皆無である。更に調べても、昭和55年から57年にかけて西平重喜氏(元統計数理研究所)が科学研究費補助金(A)『日本における統計学研究の発展(課題番号53301)』で行った60名近いインタビューの報告書があるのみであり、それから25年たった今日でも、上述以外にはそのような文献は存在しない。
そこで本課題では、西平調査の継続調査として位置づけられるインタビュー調査と、西平調査に欠如していた文献資料による調査研究の可能性を検討する。具体的には、西平調査のカバーした研究者が戦前から戦中にかけて大学などの高等教育を受けた人々に限られていたため、それ以降に大学教育を受けた次世代の研究者の証言を集めることを検討する。また数理統計学そのものの研究者だけでなく、計量経済学、統計的品質管理、生物統計など戦後まもなく日本に導入された統計関連分野の研究者や実務界での担い手にも対象を広げることによって、数理統計学が日本の学界や産業界に対してどのような影響を及ぼしてきたのかを明らかにしたい。
 また西平調査はインタビューに限定されていたため、数理統計学がどのように導入され、受容されていったかについての資料的考察がなかった。そこで、本課題では、戦前・戦中・戦後を通じ、大学等の高等教育機関のカリキュラムを考察することによって、また学術雑誌に掲載された論文等を調べることによって、数理統計学の導入・定着、応用諸分野への浸透といった変遷の過程がどの程度まで明らかできるかを検討する。一方、統計的品質管理の導入や産業界への普及に関しては、文部省統計数理研究所(当時)や日本規格協会、日本科学技術連盟といった各種団体の果たした役割も極めて大きいため、これらの機関・団体が開催したセミナー、研究会等の資料を収集可能かも検討を加えることとする。これらの資料は公刊されたものを除き、私家版など個人所有のものも多く、所有者の死後廃棄や散逸する可能性が極めて高い。そこで、本課題では、収集資料をデジタル化して蓄積する際の技術的問題点等についても検討する。
[研究成果の概要]
 本課題に関連するテーマについて、科学研究費補助金基盤研究(C)(課題番号24530229)(平成24年度〜平成26年度)の助成を受けたため、本課題においては、調査研究の設計・試行に中心を置いた。共同研究分担者とのスケジュール調整が必ずしもうまくとれず、また場所も統計数理研究所の外で行うことが結果として多くなったが、研究打合せを7月28日(立川)、9月9日(札幌)、3月12日(京都)、3月25日(統数研八重洲サテライト)の4回開催した。その結果、統計的品質管理の導入・教育を担った実務家および大学教員のうち、関東在住グループを椿が、関西在住グループを橋本が中心となってリストアップし、調査を計画することとした。また、3月31日に実務家出身の大学教員である芳賀敏郎元東京理科大学教授へのインタビューを行うこととし、ヒアリングする項目の決定などの準備作業を3月25日の打合せ時に行った。
 さらに、数理統計学の導入・定着等に関する文献調査であるが、当初統計数理研究所図書室に所蔵されている図書を利用して行う予定であったが、国立国会図書館が公開している「現代デジタルライブラリー」で代替できるものも多く、時間上の制約から「現代デジタルライブラリー」を主として利用する形に切り替えた。明治後期から大正期にかけての「相関係数の日本への導入過程」についての文献調査を行い、その成果の一部を応用統計学会主催「応用統計学シンポジウムII」(2013年3月19日立教大学)で発表した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

[口頭発表]竹内惠行「統計学は日本にどのように移入されたか:相関係数のケース」
(応用統計学会主催「応用統計学シンポジウムII?グローバル時代の統計・統計学?」2013年3月19日立教大学にて報告:プログラムはhttp://www.applstat.gr.jp/news/sympo2013_2.html に掲載)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会は開催しなかったので、該当しない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

椿 広計

統計数理研究所

橋本 紀子

関西大学