昭和611986)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

61−共研−61

専門分類

7

研究課題名

遺伝子構造データ解析のための統計的方法の開発

フリガナ

代表者氏名

ハセガワ マサミ

長谷川 政美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

予測制御研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

最近の遺伝子工学と新しいDNA配列決定法の発見に伴ない各種遺伝子構造データが急速な勢いで蓄積されつつある。そのようなデータから生物進化に関する知見を得るための方法の開発が本研究の目的である。進化における遺伝子構造の変化は確率的な現象であるので,統計的なモデルに基づいて解析することが肝要である。しかし従来の方法には,この点に関する十分な認識がなかった。本研究では従来の方法の欠陥を正し,この分野において,統計的方法の有用性を確立することを目ざす。


DNA塩基配列データから進化の系統樹のトポロジーと分岐の年代を最尤法にもとづいて推定するための方法を開発した。
まず系統樹のトポロジーの推定法に関しては,これを用いて動物,菌類のミトコンドリアと核,およびバクテリアのリボソームRNA遺伝子間の系統関係を推定することにより,動物と菌類のミトコンドリアは原核生物の共生による共通の起原をもつというモデルの尤度が最大であることを示した。また霊長類ミトコンドリアDNAのデータからゴリラよりもチンパンジーの方がヒトに近いというモデルの尤度が最大であることを示した。しかしいずれの場合も,ブートストラップ法により最大対数尤度あるいはAICの分散の大きさを推定すると,上の2つのモデルは必らずしも決定的なものではなく,今後更にデータ量を増やしていくことが必要であることが示された。
DNA塩基配列データから得られるもう一つの情報は生物種がいつ頃分かれたかという分岐年代に関する問題である。多くの場合進化におけるDNA塩基の置換は時間的にほぼ一定の確率で起っていることが知られており,これを分子時計として用いて分岐年代が推定できるわけである。われわれは最尤法のわく内で,DNA塩基配列データに最も良く適合するように分岐年代を推定するための方法を開発し,ヒトと類人猿との分岐年代を推定した。さらに系統ごとに塩基置換確率(進化速度)が異なる場合でも,その違いの程度を推定し,同時に分岐年代も推定できるように,分子時計の解析法を一般化した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Man’s Place in Hominoidea as Inferred from Molecular Clocks of DNA M.Hasegawa,H.Kishino & T.Yano,J.Molec.Evolution(in press).
Phylogenetic Inference from DNA Sequence Data.M.Hasegawa,H.Kishino & T.Yano,Proc.2nd Pacific Area Statistical Conference(in press).
On the Maximum Likelihood Estimation of Phylogenetic Trees from DNA Sequence Data:Hominoid Tree from Mitochondrial DNA.M.Hasegawa & H.Kishino(in preparation).
Endosymbiotic Origin of Mitochondria as Inferred from Ribosomal RNA Sequence Data.T.Yano & M.Hasegawa(in preparation).
Generalized Molecular Clock Analysis:A Statistical Method that takes into Account a Possible Variation of Evolutionary Rate.H.Kishino & M.Hasegawa(in preparation).


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

最近の遺伝子工学と新しいDNA配列決定法の発見に伴ない各種遺伝子構造データが急速な勢いで蓄積されつつある。そのようなデータから生物進化に関する知見を得るための方法の開発が本研究の目的である。進化における遺伝子構造の変化は確率的な現象であるので,統計的なモデルに基づいて解析することが肝要である。しかし従来の方法には,この点に関する十分な認識がなかった。本研究では従来の方法の欠陥を正し,この分野において,統計的方法の有用性を確立することを目ざす。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岸野 洋久

東京大学

矢野 隆昭

昭和大学