平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−100

専門分類

8

研究課題名

大量社会調査データ解析システムの基礎的研究

フリガナ

代表者氏名

サカモト ヨシユキ

坂元 慶行

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

最近、長期にわたる継続調査データや多くの国々についての国際比較調査データなど、大規模な社会調査データが集積しており、その有効利用が重要な課題になっている。この研究では、昨年度用意したデータを更新・編集し、この種のデータの解析に適したシステムを開発するための基礎的研究を行なう。


情報量統計学は統計モデルの想定と情報量規準によるその評価という二つの手続きによって現象を解析することをめざす統計学である。AICはこのために導入された評価基準の一つであり、最尤モデルの中でのモデル選択によって望ましい結果が得られる場合にはAICは有効である。
しかし、このような方法がつねに望ましい結果を与えるとは限らない。たとえば回帰分析で不適切に次数の高い多項式回帰モデルを用いたとすると、推定値を不安定にしたり、パラメトリック・モデルに特有のくせを持ち込むことになり、望ましい結果は得られない。このような場合、推定値が滑らかに変わるという条件の下で尤度を最大化することによってパラメータの推定値を決める方法が有効で、赤池の提案したABIC最小化法に基づく推定法はこのための有力な方法である。しかし、このことは、同一の問題に対して、いろいろなモデルや推定法が競合する場面があることを意味する。このことから、とりあえず、二つのことが問題になる。
第一は、これらのモデルよさを(推定法によらず)統一的に比較するための情報量規準が導入されなければならない。そこで、われわれは、このための一つの情報量規準としてEICを提案し、昨年度、2値回帰分析や通常の多項式回帰の場合を例としてシミュレーションを行い、EICの性能を評価した。その結果、(1)EICはAICも使えるような状況では同程度以上にはたらき、(2)それ以外の状況でも、期待平均対数尤度の推定値の精度という面でもモデル選択の面でもほぼ満足できる結果を与えることを見いだした。
しかしながら、このEICの導入によって、第二の問題、すなわち、この基準と他のAICやABICとはどのような関係にあるのか、という問題が起きてくる。そこで、今年度は、これらの関係について考察を加えた。
また、「日本人の国民性調査」と「消費者の意識と行動調査」(日本産業消費研究所)の継続データを例に、大規模社会調査データのデータ・ベースの作成を試みるとともに、予備的な解析を行った。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

〈研究内容〉継続調査データや多地域同時調査データの統計的解析に有効な方法を開発するための基礎作業として、昨年度に引き続いて、一方で、価値観や消費意識に関するいくつかの調査データを編集・整備し、他方で、現在の手法の問題点の整理や、統計手法の試作等、基礎的な作業を行なう。
〈共同研究の必要性〉新しい実用的な統計手法を開発するためには、計量分析の現場の専門家と緊密な連携を保つことによって最新の問題意識をもつとともに、最新のデータ・セットを確保し、そのデータのより深い解析に挑戦しつづけることが重要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

上村 淳三

日本経済研究センター

佐野 美智子

日経産業消費研究所

中村 隆

統計数理研究所

林田 実

北九州大学

武藤 博道

日本経済研究センター