平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−60

専門分類

7

研究課題名

細胞分化過程のコンピュータシミュレーション

フリガナ

代表者氏名

アリタ セイザブロウ

有田 清三郎

ローマ字

所属機関

関西医科大学

所属部局

教養部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

細胞分化のメカニズムを解明するため、単純な多細胞生物(Pleodorina)を題材に選び、colonyを構成する2種類の細胞による過去からの履歴情報と現在の空間位置情報を基に、細胞分化過程をコンピュータシミュレーションによって記述し、細胞分化過程の数理モデルを構築する。


細胞分化過程は生命現象のもっとも基本的で重要なもののひとつである。この分化過程を数理的に解明しようとしたのが本研究の目的であった。そのため、我々はまず緑藻菌のひとつであるPleodorinaを題材にして、培養実験データを基に、R-cellとS-cellの二種類のcellによる分化過程を経時的に追跡し、細胞分化の各世代2n(n=2,3, …,6)でR-cell、S-cellの分布及びR/(S+R)比等を計算した。
この培養実験データから細胞分化の数理メカニズムとして観測時点(tn:時刻)におけるRとSの配置(位置情報)及び(t0, t1, t2, …, t n-1)までの過去の履歴(系譜情報)が分化過程を支配する大きな要因と考えた。
次に、これらの仮説を基にして数理モデル(確率モデル)を構築し、コンピュータシミュレーションを行い、実際データとの比較検討を行った。コンピュータシミュレーション結果はn=4,5,6世代では培養実験データと比較的よく対応しており、この数理モデルは中期以降の細胞分化過程の近似モデルとして有効であることが示唆された。またこの細胞分化モデルで第n世代から第(n+1)世代への移行過程での(内向・外向)情報も系譜情報に加味した数理モデルも考察した。
コンピュータシミュレーションは細胞分化過程の検証手段として、有効な説得力を与えるばかりでなく、新しいアイデアを生み出し、また思考を広げてゆく大きな武器となった。コンピュータシミュレーション結果と実際データの検討結果から我々の研究は隣接cell間の相互作用モデルや空間占有過程などの新しい曲面へと進展した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

美弥祢子. “Pleodorina californicaの細胞分裂過程及び細胞配列の解析" 川崎医療福祉学会誌.2. 237-243頁. 1992年
有田 清三郎.『医学のための数理モデル入門』 中桐印刷(岡山)1992年

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

細胞分化は生命現象の中できわめて基本的で重要な課題であるがそのメカニズムは未だ解明されておらず、コンピュータシミュレーションや数理モデルによる解析方法が解明の糸口への有効な手段となりうることが示唆され、統計数理研究所との共同研究が切望されている。
我々は緑藻Pleodorinaを題材にして、細胞分裂能力を有したReproductive cellと分裂能力を欠いたSomatic cellについて過去の履歴情報と現在の空間位置情報による仮説を基に、コンピュータシミュレーションによって細胞分化過程を記述し、実際の培養による実験データと比較検討し、細胞分化の数理モデルを構築する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所

堀 義巳

川崎医療福祉大学

美祢 弘子

川崎医療福祉大学

米田 正也

川崎医科大学