平成222010)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

22−共研−2025

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

3

研究課題名

疾病に対する集団戦略・高リスク戦略の観点からのコミュニティ評価指標の検討

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura, Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

データ科学研究系

職  名

教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は,限られた既存データを有効に活用し,各都道府県における集団戦略(住民全体への対策)と高リスク戦略(個々の疾患に対して高いリスクをもつ集団への対策)の立案・評価につながる指標を開発することである。
これまで申請者らは,脳卒中に主眼を置き,国・都道府県レベルの死亡動向に対する変動要因を中村のベイズ型コウホートモデルに基づいて分析を行うことで,「年齢効果」の他に,人々が異なる時代背景を歩むなかで形成された「世代効果」や,これまでの脳卒中対策や社会環境の変化による「時代効果」のあることを明らかにした。平成20年度は,各都道府県で実施した集団戦略と高リスク戦略の成果を反映する「時代効果」及び「世代効果」をそれぞれ主成分分析することによって,時代効果から‘住民全体’への対策の「成果の大きさ」と「近年の傾向」をみる指標を,世代効果から‘特定世代’への対策の「成果の大きさ」と「成果の現れた世代」をみる指標を抽出し,これらが保健医療対策の歴史・時代背景・社会統計と関連のあることを確認した。平成21年度は,「年齢効果」「世代効果」と,現行の集団戦略を‘継続した場合’と‘中断(又は変更)した場合’の2通りのシナリオに基づく「時代効果」を用いて,各都道府県における住民特性や集団戦略の影響をふまえた将来の死亡推計を行った。
平成22年度においては,将来の死亡推計を指標にして,さらに全国的な動きや都道府県間の比較を通して検討を行った。その結果,男性18地域・女性11地域では,2035年までに脳血管疾患の総死亡数の増加を示し,救急体制や受け入れ病院の整備・マンパワーの養成を推進する必要のあることがわかった。また,2035年における年齢調整死亡率ワースト10位は現在と入れ替わり,これらの多くは全国の動きとは反対に現行の集団戦略を‘継続した場合’の方が死亡率は高くなるため,現状の集団戦略を見直して強化する必要のあることがわかった。以上より,これら2通りのシナリオに基づく将来推計は,今後の集団戦略のあり方を検討するうえで役立つ指標になり得ることを確認した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【脳卒中死亡率の分析について】
平成22年度は,1)の学会発表 を行った。
1) 三輪のり子・中村隆 (2010). 47都道府県における脳血管疾患死亡の2035年までの将来動向, 日本公衆衛生雑誌, 57, 10, 398.
2) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2009). Prefectural and Japan future time trends in the cerebrovascular disease mortality projections, based on age-period-cohort analyses, Asia Pacific Association for Medical Informatics 2009, Proceedings, P-62.
3) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2009). New indicators for the evaluation of community policies based on period and cohort effects in cerebrovascular disease mortality rates, Japan Hospitals, 28, 79-85.
4) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2008). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の対策評価指標としての検討(2), 日本公衆衛生雑誌, 55, 10, 13.
5) Miwa, N., Nakamura, T. and Ohno, Y. (2007). Constructing indicators to evaluate community policies based on period and cohort effects on Cerebrovascular disease mortality rates, The 39th Conference of the Asia-Pacific Academic Consortium for Public Health, Abstract Book, 191-192.
6) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2007). 脳血管疾患死亡におけるPeriod効果とCohort効果の脳卒中対策評価指標としての検討, 日本公衆衛生雑誌, 54, 10, 417.
7) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). わが国における20世紀の脳血管疾患死亡率の変動要因と今後の動向, 日本公衆衛生雑誌, 53, 7, 493-503.
8) 三輪のり子・中村隆・大野ゆう子 (2006). 都道府県別にみた脳血管疾患死亡率のAge-Period-Cohort効果?6都道府県における試み?, 日本公衆衛生雑誌, 53, 10, 605.
9) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2006). 脳血管疾患の病型別死亡数の将来推計?ベイズ型ポアソンAge-Period-Cohortモデルに基づく?, 第26回医療情報学連合大会抄録集(CD-R), 158 (P18-1).
10) 三輪のり子・中村隆・成瀬優知・大江洋介・大野ゆう子 (2005). 日本の脳卒中死亡数の2050年までの将来推計, 日本公衆衛生雑誌, 52, 8, 611.
11)三輪のり子・成瀬優知・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(1報)脳梗塞, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.
12)成瀬優知・三輪のり子・中村隆・大江洋介・大野ゆう子 (2004). 脳卒中死亡率のAge-Period-Cohort分析(2報)脳出血・クモ膜下出血, 日本公衆衛生雑誌, 51, 10, 509.
【脳卒中罹患率(富山県)の分析について】
1) 三輪のり子・成瀬優知 (2004). 出生コホート分析を用いた脳卒中罹患率の検討?富山県脳卒中情報システムより?, 厚生の指標, 51, 11, 10-16.
2) 三輪のり子・成瀬優知 (2003). 出生コホート法を用いた脳卒中発症率の比較?富山県脳卒中情報システムより?, 日本公衆衛生雑誌, 50, 10, 517.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催はありませんでした。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大野 ゆう子

大阪大学

三輪 のり子

千里金蘭大学