平成212009)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

21−共研−2067

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

5

研究課題名

脳における運動計画とその表現に関する数理的研究

フリガナ

代表者氏名

イケダ シロウ

池田 思朗

ローマ字

IKEDA, Shiro

所属機関

統計数理研究所

所属部局

数理・推論研究系

職  名

准教授

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本共同利用では,動物が身体を動かす動作を計画する際に脳内でどのような信号,すなわち運動指令が作られるのかを数理的な立場から研究した.
 運動指令の研究は1980年代に始まった.当初は,実験的に得られた手の到達運動に関し,その軌跡を正確に再現という観点から関節トルク,あるいは筋への指令をどのように設計するかについて精力的に研究が行なわれ,軌道の特徴を精密に説明する理論が複数生まれた.その後,脳からの信号と運動誤差の観点から運動指令と実際の動作を説明する理論が生まれ,この二つの大きな流れが研究の中心になっている.しかし,いずれも基本的には外から観測できる運動の性質を説明するための現象論であり,脳内における運動指令の表現については未だに明らかになっていない.
 一方,画像や音声などの感覚情報については,独立成分分析をはじめとする統計的手法によって感覚皮質神経活動の意味が明らかになってきている.その際,表現が疎であることが情報表現の鍵となっている.これは近年の統計における LASSO などの研究と関連して,活発に研究が行われている.運動指令について同様の手法がとられていない理由は,歴史的な背景を別にすれば,感覚情報が受動的であり統計的手法がとりやすいのに対し,運動情報が能動的であることによる.このため,観測されたデータを解析する,という統計的手法のみでは十分でない.
 様々な研究の結果,脳内においてなんらかの意味で情報の疎な表現が重要であることは支持されている.運動指令の表現に関しても同様に疎な表現が重要であると予想される.本研究では運動指令の表現に対して,疎な表現の重要性とその結果得られる運動の関係を明らかにし,脳内での運動指令の方法に迫ろうというものである.
 平成21年度の共同利用では,金骨格系をシミュレートした2関節腕モデルを用い,数値実験を通じて我々の提案を確かめた結果について討論し,その結果については国際会議(CDC2009)で発表を行った.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

 これまで共同で行った研究の結果は以下の通りである.これまで,並行して研究を続けたのと同時に共同での研究,出版をおこなっている.

・ 阪口 豊,和田克巳:低い時間解像度の運動指令がもたらす手先軌道の性質:運動指令表現の単純化仮説,電子情報通信学会論文誌,J91-D, 2368-2381,2008
・ Shiro Ikeda and Yutaka Sakaguchi, ``Motor planning as an optimization of command representation,'' The Insitute of Statistical Mathematics, Research Memorandum, No.1045, 12 September 2007
・ Yutaka Sakaguchi and Shiro Ikeda, ``Motor planning and sparse motor command representation,'' ,Neurocomputing, Vol.70, Issues 10-12, pp.1748-1752, June 2007
・ 池田 思朗 「運動計画と運動指令の疎表現」「脳を活かす研究会」編著 「ブレイン・マシン・インターフェース--脳と機械をつなぐ--」, 1章2 節, pp.16-30, オーム社, September 2007
・ 阪口 豊,池田 思朗:運動指令の疎表現と運動計画 - 二関節非線形腕による到達運動への適用, 電子情報通信学会技術研究報告,NC2006-161, 2007
・ 阪口 豊:運動指令の最適性に関する一考察 -タスク最適化とスパース表現-, 電子情報通信学会技術研究報告,NC2005-158, 2006
・ 井口尚彦,阪口 豊,石田文彦:パルス型神経細胞モデルに基づくsignal dependent noise生成機構の検討,電子情報通信学会論文誌,J87-D-II, 1851-1859,2004

平成21年度の発表内容は以下の通りである.

・ Shiro Ikeda and Yutaka Sakaguchi, ``Motor planning as an optimization of command representation,'' In Proceedings of 48th IEEE Conference on Decision and Control (2009 CDC), pp.4499-4504, Shanghai, China, December 2009

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

阪口 豊

電気通信大学