平成222010)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

22−共研−10

分野分類

統計数理研究所内分野分類

f

主要研究分野分類

7

研究課題名

粒子フィルタによる経済時系列解析

フリガナ

代表者氏名

ミサキ ヒロウミ

三崎 広海

ローマ字

Misaki, Hiroumi

所属機関

東京大学

所属部局

大学院経済学研究科

職  名

博士課程

 

 

研究目的と成果の概要

非線形・非ガウスの状態空間モデルで表現される経済時系列モデルに対して、粒子フィルタを用いて分析する方法を提案し、実証分析を行っている。より具体的にはファイナンス分野における信用リスクモデルの一種である誘導型モデルについて、現実的な仮定と考えられる非負性、および短期金利とデフォルト強度の相関を導入したモデルを設定し、日本市場で取引される社債の価格系列データから、市場に含意された債務者のデフォルト強度の推移を推定した。粒子フィルタの適用においてパラメータ推定は重要な問題であるが、本研究では、まず自己組織化により暫定的な推定値を求め、その周りで多次元最適化アルゴリズム(Nelder-Mead 法)を実行することによって最尤推定値を導出した。さらに標準誤差を推定するため、対数尤度関数を数値的に微分することにより情報行列を計算する方法を提案した。この方法は、数値的な近似を重ねることにより誤差が大きくなる虞があるが、簡単なモデルに対して行った数値実験によれば、実用に耐える精度を備えていることが明らかになった。より一般のモデルに対する正確性の検証については今後の課題となる。実装の点では、フィルタリング及びパラメータ推定の精度を向上させる一つの有力な方法は粒子数を増やすことであるが、この膨大な計算量を処理するため、本年度はMPIを用いて家庭用PCおよびスーパーコンピュータの双方において並列計算環境で計算を行い、提案モデルとパラメータ推定手法の実装可能性を提示した。