平成51993)年度 共同研究C実施報告書

 

課題番号

5−共研−2

専門分類

7

研究課題名

遺伝子構造デ−タ解析のための統計的方法の開発

フリガナ

代表者氏名

ハセガワ マサミ

長谷川 政美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

予測制御研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

遺伝子構造データ(核酸、アミノ酸の配列データ)に基づき生物の系統進化や遺伝子進化に関する知見を得るための統計的方法の開発を行なうとともに、解析ソフトウェアを整備する。さらに、開発された方法を分子系統学上重要と思われる具体的な問題に積極的に適用し、この分野における統計的方法の有効性を確立することを目指す。


前年度までに、アミノ酸配列データから最尤法によってたんぱく質の進化系統樹を推定するための方法、を開発するとともに、さまざまなアミノ酸置換の確率モデルを比較して、モデルの改良を行ってきた。本年度は、モデルの改良に関しての検討を継続するとともに、実際問題に対するデータ解析により、モデル間の比較、評価を行った。現在のところ多くの蛋白質に関して、Jonesらの推定した置換確率を用いる場合がデータへの適合が良いという傾向にある。
分子系統樹の推定における最尤法の欠点として、種の数が増えると膨大な計算時間がかかるという問題点があるが、これを克服するために、最尤法の近似となるような簡便法を開発し、トポロジーのスクリーニングに適用した。
距離行列法による系統樹推定を行う際、距離行列が正しく推定されていることが前提となるが、従来の推定法では情報のロスがあるため、それを補うための新しい推定法を提案し、その有効性を示した。
最尤法による系統樹推定が、さまざまな条件下でどの程度ロバストであるかを、計算機シミュレーションにより検討した。
最尤法によって推定された系列樹のブートストラップ確率を求めるための簡便法(RELL法、MND法)が良い近似になっていることを示した。
ここで開発された方法を多くの実際問題に適用し、生物学的に新たな知見を得た。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Hasegawa, M.,Di Rienzo,A.Kocher,T.D.,Wilson,A.C.,Toward a more accurate time scale for the human mitochondrial DNA tree, Journal of Molecular Evolution, Vol. 37, 1993年10月
Hasegawa, M.,Kishino,H., Accuracies of the simple methods for estimating the bootstrap probability of a maximum-likelihood tree,Molecular Biology and Evolution. Vol. 11, No.1, 1994年1月

橋本哲男、足立淳、長谷川政美、蛋白質分子系統樹推定におけるアミノ酸置換確率モデルの評価、日本統計学会、1993年7月
Hasegawa,M.,Hashimoto,T.,Adachi,J.,Cao,Y.,and Yano,T.,Phylogenetic place of Archaebacteria,as inferred from protein sequences,International Workshop on Molecular Biology and Biotechnology of Extremophiles and Archaebacteria.1993年8月
Hashimoto,T.,Nakamura,Y.,Nakamura,F.,Shirakura,T.,Adachi,J.,Goto, N.,Okamoto,K.,and Hasegawa,M.,Phylogenetic place of a mitochondria-lacking protozoan,Giardia lamblia,as inferred from the amino acid sequences of elongation factor 1α,International Workshop on Molecular Biology and Biotechnology of Extremophiles and Archaebacteria.1993年8月
曹纓、足立淳、Janke,A.,Paabo,S.,長谷川政美、ミトコンドリアゲノム全配列データから推定された真獣類の系統進化、日本遺伝学会、1993年9月
足立淳、長谷川政美、最尤法による分子系統樹推定の高速化、日本遺伝学会、1993年9月
長谷川政美、岸野洋久、最尤系統樹ブートストラップ確率の簡便推定法、日本遺伝学会、1993年9月
足立淳、長谷川政美、最尤法によるタンパク質の距離行列と系統樹の推定、日本分子生物学会、1993年12月
長谷川政美、古細菌の進化的位置と真核生物の初期進化、日本分子生物学会、1993年12月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

遺伝子構造データから分子系統樹を推定するために、AICを基礎としたデータ解析法の開発を行なう。具体的には、系統樹のトポロジー(枝分かれの順番)の推定と分岐年代の推定という2つの問題を扱う。
塩基もしくはアミノ酸の間の相互置換を記述する確率モデルとしては、様々なものを導入しそれからを比較することにより、より現実的なモデルを追求していく。
実際のデータ解析においては、脊椎動物内の系統関係の解析、動物、植物、菌類の分岐過程の解析、真核生物の起源と初期進化過程に関する解析、など分子系統学上未解決の実際問題を扱い、統計的方法の有効性を検証する。
また、解析上重要となる一部のデータに関しては遺伝子解析により収集する。大規模データの処理、計算のため、統計数理研究所を核とする共同研究体制を確立する必要がある。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

足立 淳

オックスフォード大学

岡田 典弘

東京工業大学

岸野 洋久

東京大学

中村 嘉宏

昭和大学

橋本 哲男

統計数理研究所

細谷 将彦

琉球大学

矢野 隆昭

昭和大学