平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−78

専門分類

7

研究課題名

多変量解析法による微量元素濃度の野草−野生動物間の流転と動態

フリガナ

代表者氏名

タンバラ ヒロシ

檀原 宏

ローマ字

所属機関

信州大学

所属部局

農学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

信州には標高1,000m以上の高原が広い範囲で分布している。この高原草地帯を利用して,育成家畜の放牧が企てられている。が,その草質についての詳細はまだ知られていない。微量元素組成,濃度の情報はその重要なものの一つである。またその野草を餌として活動している野生動物(にほんじか,かもしか,…etc)は,野草を飼料化する場合に有力な手がかりを与える。野草,野生動物中の微量元素濃度を定量したデータについて,それら相互のパターンを多変量解析して,両者間の元素流転と動態を研究する。


〔実施状況〕
野草−野生動物間の微量元素の流転の様相を追求し,その微量ミネラルの必要性,要求度を解明することを目的に本研究が開始された。これらの基礎的な事項を明らかにして終局的には,山地,未開地に放牧される家畜の健康を栄養の面から追求して,わが国における牛肉,羊肉の低コスト生産を企図したものである。
本研究は1984年度より開始された。〜’87年度にかけて信州高原一帯より,野草試料約200点,野生にほん鹿(被毛,糞など)試料約50点,さらににほんらい鳥(羽毛,糞など)試料約60点を得た。’87年度より京都大実験所に於て,これらの試料から中性子放射化分析法を用いて,Mn,Co,Mo,Fe…などの微量元素約30種類の分析を開始した。その一部は分析を終了し,さらに一部のデータは統数研の駒沢教授と共同で多変量解析の手法により統計分析が行なわれた。その成果はすでに“face analysis”による解析として報告されている。
その後,’88〜’89にかけて,不幸にも京大原子炉がトラブルのために運転中止の余儀ない事態となり,元素分析が中断した。が,’89年度後期(9月)より回復し,目下分析が継続されている。したがつて以後の統計分析はデータ未了なため完了していない。′90年度の上半期中には元素分析は終了するので,それをまってデータの統計解析を行なう予定である。
いっぽう申請者の教室では鶏肉の食味向上に関する仕事を続けている。外国鶏よりはるかに高度な食味をもつ肉用鶏の品種改良,飼養法改善を目的としたものである。今年度は研究の一部として,この鶏肉中の呈味成分(核酸関連物質)含有パターン解析を多変量解析(主成分々析)法で実施した。
〔成果〕
食肉鶏4品種(さつま,農林502号,さつま×農林502およびくきん×農林502号)から食用部分の2ケ所の筋肉(胸…ささみ,脚…もも)をとり出し,それについて呈味成分として6種類の核酸関連物質(ヒポキサンチンHx,イノシンHxR,アデノシンAD,イノシン−1−リン酸IMP,アデノシン−1−リン酸AMPおよびアデノシン−3−リン酸ATP)の濃度を定量した。これらのデータの主成分々析で,第1〜3主成分が抽出された。第1主成分は,これらの物質濃度のパターンはほとんどが筋肉部位に関連していること(負荷量=47%),第2主成分ではHxとAMP濃度は逆相関々係が見出された(31%)。そして第3主成分としてAMP濃度は他の物質のそれと独立に存在していることが確かめられた。(13%),鶏肉中のこれら物質含量パターンと食味との関係はなお検討中である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

以上の成果は本年度開催される
“第83回日本畜産学会大会,3月29〜30日(1990年)於宇都宮で発表する予定である。
〓原宏(信大農),唐沢豊(信大農),駒沢勉(統数研):鶏食筋肉中の核酸物質含量パターンの多変量解析(要旨),日本畜産学会大会(第83回),4月(1990)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

昨年度は,高原地帯より採取した野草中の20〜30種類の微量元素(マンガン,コバルト,亜鉛…etc)濃度のデータをface graph法で表現し,産地別,時期別そして種類ごとの比較を行なった。多変量に設定された各種の微量元素濃度は,それぞれのパターンの違いを感覚的によく表わした。さらにこれらの相異を量的に把握するために,主成分々析法その他の手法を今年度は試みたい。
とくにface graphic analysisには特定にプログラムされたcomputorを必要とし,さらに他種の解析法を併用してベストな統計分析を進めるには,統計数理研究所の専門家との共同研究がどうしても必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

駒澤 勉

統計数理研究所

建石 繁明

信州大学