平成クオ1989)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

クオ−共研−35

専門分類

5

研究課題名

スピン系の相転移とフラクタルの研究

フリガナ

代表者氏名

オノ イクオ

小野  郎

ローマ字

所属機関

日本女子大学

所属部局

理学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

10 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

スピン系の相転移で基底状態に縮退のある系は通常の相転移と異って,臨界指数や界面エネルギーも変った性質がもつことが期待される。クラスターの形や界面の形はフラクタル性をもつので,これとの関連についてシミュレーションにより調べる予定である。


A.3状態スピン系の相図の決定
(1)S=1 BEG模型の相図
S=1のスピンはS=1,0,−1の3つの状態が許される。BEG模型の相互作用はH=−J,〓のように表わされる。交換相互作用〓の場合でも〓のときは縮退した基底状態をもつ4重極的相(SQ相)が現れる。Dが負のある範囲でリエントラント相が現われる。〓を加えたとき,このリエントラント相がどのように変化するかをBethe近似およびモンテカルロ・シミュレーションで調べた。Bethe近似の予測はほぼ確認された。
(2)q=3ポッツ模型の磁場−温度相図
イジング模型では磁場の成分数は1であるが,q=3のポッツ模型は3状態で独立な秩序変数は2つなので,これに対応した磁場の成分も独立に2つある。磁場−温度を変数とする3次元的相図をBethe近似で求めた。反強磁性相互作用に対しては2副格子の秩序があり4つの独立な秩序変数があるので,独立な磁場成分も4つある。この相図も1部調べており,これを確めるためモンテカルロシミュレーションを行う必要がある。
B.界面の方法によるスピン系の相転移の研究
スピン系の相転移をモンテカルロ・シミュレーションにより調べる場合,通常の周期的境界条件でなく,複数のドメイン秩序相を作り出すような不整合な境界条件を課し,これによって生じた界面の自由エネルギーを正確に評価する方法を確立した。この方法を用いて次の系の相転移を調べた。
(1)6クロック模型の相転移
スピンが面内で6方向のみをとることが許され,その相互作用か〓で与えられる模型を6クロック模型という面内で連続的な向きが許されるXY模型の不連続版である。この不連続性のため,中間温度で生じる秩序相はゆらぎが大きく,Kosterlitz−Thoulers相的であることが指摘されている。これを界面法で確認し,転移温度,臨界指数〓〓を精度よく決定することができた。
(2)反強磁性q=3ポッツ模型の相転移
この模型も(1)との秩序変数が類似であるので,中間相が期待される。第2近接相互作用を弱に強磁性的なものとすることで(1)と同様なことが得られることが確認された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表
2)A.Yamagata and I.Ono:Phase Transitions of Ferromagnetic 6−Clock Model on Square Lattice.J.Magn.Magn.Mat.90&91(1990),Proceedings of Yamada Conference XXV on Magnetic Phase Transitions at Osaka.(in press)
3)I.Ono and A.Yamagata:Investigations on the Intermediate Phase of 3−state Antiferromagnetic Potts Model by Monte Carlo Interface Methods J.Magn.Magn.Mat.90&91(1990)(in press)
4)A.Yamagata and I.Ono:Phase Tansitions of 6−Clock Model in two
山縣敦・小野〓郎 「界面の方法を用いたスピン系の相転移のモンテカルロ・シミュレーション」 1989年10月 日本物理学会・分科会(鹿児島)
加園克巳・小野〓郎 「反強磁性的双2次相互作用をもつスピン1のBEG模型の相転移III」 同上
山縣敦・上野陽太郎 「モンテカルロ界面的方法によるラフニング転移I」 1990年4月 日本物理学会・年会(大阪)
小野〓郎・山縣敦 「界面エネルギーによる反強磁性ポッツ模型の中間秩序相の解析」 同上
上野陽太郎・小野〓郎 「相転移研究に対するモンテカルロ界面的方法の特徴と利点」 同上
加園克巳・小野〓郎 「磁場中の反強磁性性q=3のPotts模型の相転移」 同上
論文
1)Y.Ueno and I.Ono:Interface Approach toPhase Transitions and Ordering by Monte Carlo Simulation and its Applications to Three−Dimensional Antiferromagnetic Potts Models.J.Phys.Soc.Jpn.〓(1989)1162


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

モンテカルロ・シミュレーションを行う系はスピン数数万個である。スフップ数は転移温度付近で数万と予想される。1つの系で境界条件と温度を変えて,さらにサイズ依存性を調べるため,かなりの計算時間(スーパーで数十時間)必要である。さらに界面の形等も解析するため,計算機に精通していることが必要であると同時に相転移の理論についても理解していることが必要である。
貴研究所の田村助教授は共同研究にとって必要欠くべからざる人である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岡本 清美

東京工業大学

尾関 之康

東京工業大学

覚井 真吾

東京工業大学大学院

加園 克巳

東京慈恵会医科大学

田口 善弘

中央大学

田村 義保

統計数理研究所

西森 秀稔

東京工業大学

安村 薫

東京工業大学

山縣 敦

日本女子大学