平成302018)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

30−共研−2021

分野分類

統計数理研究所内分野分類

b

主要研究分野分類

3

研究課題名

新生児・乳児における自発運動の解析

フリガナ

代表者氏名

ギマ ヒロタカ

儀間 裕貴

ローマ字

Gima Hirotaka

所属機関

鳥取大学

所属部局

地域学部附属子どもの発達・学習研究センター

職  名

特命講師

配分経費

研究費

40千円

旅 費

150千円

研究参加者数

8 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 新生児および乳児の特徴的な全身性運動はgeneral movements(GMs)と呼ばれ,GMsの質的なパターンが新生児期から乳児期にかけて継続的な異常性を示す場合,後に脳性麻痺を主とした神経学的後遺症を多く呈することが知られている.また,近年では脳性麻痺以外の疾患(発達遅滞,自閉症,レット症候群など)においても,新生児期および乳児期初期における自発運動やGMsが質的な異常性を示すことが報告されている.本申請課題では,新生児・乳児における自発運動特性を統計的・数理的手法などを用いて定量的に捉えることを目的としている.特に,中枢神経系の成熟度合いを強く反映するとされる出産予定日後6〜8週時点におけるGMsに着目し,この時期における早産児,低出生体重児の自発運動の特徴を定量的な解析に取り組んできた.全身性自発運動の動画データ,2次元または3次元の四肢運動軌跡データ,四肢末梢部における運動速度データや関節運動データなどから得られる各種の運動特性指標と,後の発達との関連について検討を進め,将来的な発達障害のサインを早期かつ選択的に発見するための運動特性指標を検討している.
 我々は,これまで極低出生体重(出生児体重が1,500g未満)児における,新生児・乳児期の動画データを多数記録し,これらの児を長期的にフォローアップして,発達経過に関する各種データも併せて蓄積してきた.これらのデータを集計した結果,ビデオ記録の対象となった児には,その後の発達として精神発達遅滞,脳性麻痺,自閉症スペクトラム障害などの発達障害を呈した児が多く含まれることがわかった(儀間・他,2015,2017).また,修正3ヵ月齢児の極低出生体重児における自発運動の解析から,後に自閉症スペクトラム障害を呈した児における頸部・頭部の運動特性について明らかにし(Gima et al,2018),この成果は平成30年度鳥取大学科学研究業績表彰を受賞した.平成30年度は,極低出生体重児の発達特性をさらに広い視点で捉えるため,感覚機能,言語機能,認知機能,社会性の発達なども含めた質問紙票(問診票)のデータ解析にも取り組んだ.さらに,3次元動作解析装置や姿勢センサなどのツールを用いた満期産児の運動計測,その後の粗大運動発達(寝返り動作の発達など)の検討にも継続して取り組み,自発運動特性のメカニズムについての理解をより深めるための検討を進めている.
 平成30年度においては,4件の学会発表が行われ,2件の論文(和文1件,英文1件)がアクセプト・掲載された.現在も継続したデータ解析に取り組んでおり,次年度以降も継続申請の上で成果報告を行っていく予定である.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

平成30年4月〜平成31年3月
【論文発表】
・儀間裕貴・黒宮寛之・渡辺はま・中村友彦・多賀厳太郎:極低出生体重児における1歳6ヵ月・3歳時の問診評価と6歳時発達の関連.理学療法学,印刷中
・Hirotaka Gima, Koji Shimatani, Hisako Nakano, Hama Watanabe, Gentaro Taga: Evaluation of fidgety movements of infants based on Gestalt perception reflects differences in limb movement trajectory curvature. Physical Therapy, in press.
【学会発表】
・多賀厳太郎,渡辺はま:乳児の自発運動の個性.日本赤ちゃん学会第18回学術集会(平成30年7月,東京)
・儀間裕貴,黒宮寛之,渡辺はま,中村友彦,多賀厳太郎:極低出生体重児における1歳6ヵ月・3歳時の問診評価と6歳時発達の関連.第32回中国ブロック理学療法士学会(平成30年9月,鳥取)
・藤澤祐基,中野尚子:乳児の起き上がり動作分析-骨格検出システムを用いて-.日本発達神経科学学会第7回学術集会(平成30年11月,東京)
・中野尚子,藤澤祐基,儀間裕貴,渡辺はま,多賀厳太郎,小西行郎:乳児における臥位から座位への起き上がり動作分析.第5回日本小児理学療法学会学術大会(平成30年12月,大阪)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

テーマ:「General movements 研究会」
日時:平成31年1月26日(土)10:00-17:00
場所:統計数理研究所 セミナー室
参加人数:6人

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大村 吉幸

東京大学

小西 行郎

同志社大学

島谷 康司

県立広島大学

多賀 厳太郎

東京大学

中野 純司

統計数理研究所

中野 尚子

杏林大学

渡辺 はま

東京大学