平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−73

専門分類

7

研究課題名

蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率の推定

フリガナ

代表者氏名

ハシモト テツオ

橋本 哲男

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率を推定し、分子進化学的解析手法への応用を図ることを目的とする。そのための基礎作業として、さまざまな蛋白質ファミリ−ごとに近縁種間でのアミノ酸配列アライメントを構築する。


蛋白質の進化過程におけるアミノ酸置換確率を推定し、相同性探査、分子系統樹の推定などの分子進化学的解析を行う際の確率モデルとして適用することを目標としている。本年度も昨年度までに引き続いて、置換確率推定に至るための集計を行う準備段階としてのアライメントの作業を中心に研究を進めた。
対象とした分子種は、真核生物の細胞骨格関連蛋白種(アクチン、チューブリンなど)および葉緑体DNAにコードされている蛋白種である。これらのうちの一部については、既にアライメントを整備しているものもあったが、近年、さまざまな生物のゲノム解析が進展し多くの追加データが蓄積されたため、再解析を行うこととした。
それぞれの蛋白種に関してblastおよびfastaによる解析(相同性解析)を行い、相同と考えられる配列をコンパイルした。第一段階のアライメントには、Hidden Markov Model による複数配列アライメント法を用い、その結果に基づき、ペアワイズの相似度行列や最尤法アライメントの結果も考慮してマニュアルで修正を加えた。
さらに、葉緑体DNAにコードされている蛋白種については、アミノ酸置換頻度の集計を行い、置換確率行列を推定した。この行列をモデルとして、高等植物内部の系統関係を葉緑体関連蛋白質のデータをもとに最尤法で検討した結果、このモデルの適合は、これまで用いてきた経験的なアミノ酸置換確率モデルのそれよりも向上していた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Martin, W., Stoebe, B., Goremykin, V., Hansmann, S., Hasegawa, M. and Kowallik, K.V. Gene transfer to the nucleus and the evolution of chloroplasts. Nature 393: 162-165 (1998)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

ゲノムプロジェクトの飛躍的な進展に伴ない、近年、とくに真正細菌の配列デ−タが非常に早いペ−スで蓄積されつつある。そこで本年度は真正細菌界に着目し、DNA複製、転写、翻訳、エネルギー代謝、シャペロン等に関与する全ての蛋白質のアライメント構築を行なう。さらに、これらの結果をもとに、真正細菌内部でのグループ(グラム陰性・陽性等)別、蛋白質のグループ別に置換頻度の集計を行ない、それぞれに関するアミノ酸置換確率行列を推定し、既存のものと比較する。アライメント構築に関わる十分なデータ解析環境を必要とするため、統計数理研究所における共同研究体制の確立が望まれている。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

足立 淳

オックスフォード大学

岸野 洋久

東京大学

白倉 哲郎

祇園歯科クリニック

長谷川 政美

統計数理研究所