平成232011)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

23−共研−4320

分野分類

統計数理研究所内分野分類

j

主要研究分野分類

3

研究課題名

ゲノム情報と臨床情報を統合したデータ集約型サイエンス/ヘルスケアに向けた統計数理学的研究

重点テーマ

ゲノム多様性と進化の統計数理

フリガナ

代表者氏名

ナカオカヒロフミ

中岡博史

ローマ字

Nakaoka Hirofumi

所属機関

国立遺伝学研究所

所属部局

総合遺伝研究系 人類遺伝研究部門

職  名

特任研究員

配分経費

研究費

40千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

医学・医療において、「情報」を駆使した知識発見に基づくデータ集約型ヘルスケアを実現するため、大規模な臨床情報と個々人のゲノム情報、さらには個々人を取り囲む社会経済学的環境(social network)をも取り込んだ、疾患メカニズムのシステム解析における統計解析の新たな方向性を考える。
本研究では、遺伝子‐疾患関連のエビデンスを統合することにより、将来のリシーケンス候補遺伝子の推測および生物学的経路の理解を可能にするシステムズ・ジェネティクス・アプローチについて検討を行った。モデル疾患として関節リウマチを解析した。
データベース検索により関節リウマチと関連する遺伝的多型情報(HLA-DRB1、23SNPs)を抽出した。症例1287例、対照1500例からなる関連解析を行い、選択した遺伝的多型の関節リウマチとの関連を追認した。
これら遺伝子‐疾患関連情報をタンパク質間相互作用データと結合し、以下のシステムズ・ジェネティクス解析を行った。まず、タンパク質間相互作用ネットワーク上における、既知の関節リウマチ感受性遺伝子群との近位性をthe random walk with restart algorithmによって算出し、リシーケンシング標的遺伝子の推定を行った。Leave-one-out cross validationによって、標的遺伝子選定法の予測力が優れていることを確認した。リシーケンシング標的遺伝子として第一位にランクされた遺伝子は、マウスにおける自己免疫性関節炎の原因遺伝子(ZAP70)であった。また、上位にランクされた遺伝子群には、自己免疫疾患のゲノムワイド関連解析で感受性遺伝子として同定された遺伝子が高度に集中していた。次いで、関節リウマチ感受性遺伝子と標的遺伝子として上位にランクされた遺伝子群からなるネットワークについて、階層的クラスター分析を行ったところ、3つの免疫学的経路「白血球活性化および分化」、「パターン認識受容体シグナル伝達」および「ケモカイン・ケモカインレセプター」が同定された。これら免疫学的経路に関わる遺伝子の異常が関節リウマチの発症に関与していると推察される。これらの結果よりシステムズ・ジェネティクス・アプローチの有用性が示唆される。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Nakaoka, H., Cui, T., Tajima, A., Oka, A., Mitsunaga, S., Kashiwase, K., Homma, Y., Sato, S., Suzuki, Y., Inoko, H., and Inoue, I. (2011). A systems genetics approach provides a bridge from discovered genetic variants to biological pathways in rheumatoid arthritis. PLoS One 6, e25389.

中岡 博史、崔 泰林、田嶋 敦、光永 滋樹、猪子 英俊、井ノ上 逸朗.関節リウマチにおけるシステムズ・ジェネティクス・アプローチ〜感受性遺伝子座から生物学的経路の推定〜日本人類遺伝学会第56回大会

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

2011年12月19日(月)・20日(火)
統計数理研究所 共同利用重点型研究による研究集会
- ゲノムの多様性,進化,疾患に関わる話題についての講演 -
統計数理研究所 セミナー室5 (3階 D313,314)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

井ノ上 逸朗

国立遺伝学研究所

細道 一善

国立遺伝学研究所