平成152003)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

15−共研−2043

専門分類

8

研究課題名

犯罪統計データのコウホート分析

フリガナ

代表者氏名

ナカムラ タカシ

中村 隆

ローマ字

Nakamura Takashi

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年,日本の治安情勢は悪化の一途を辿っており,犯罪件数の増加や犯罪内容の悪質化等により,
刑務所に収容される受刑者は急増している。その背景には,バブル経済崩壊後の景気低迷の長期化
や雇用情勢の悪化などが少なからず影響していると考えられる。特に,団塊の世代と呼ばれる戦後
のベビーブーム世代は,職場でリストラの対象になるなど,厳しい境遇に置かれており,社会から
ドロップアウトする危険に晒されている。また,高齢者による犯罪も増加しており,受刑者の高齢
化は一般国民の高齢化を上回る勢いで急速に進行している。このほか,女子のよる犯罪は,男子に
よる犯罪を上回るペースで急増しており,女子刑務所を増設しても間に合わない状況となってい
る。
 本研究は,以上のような我が国の刑務所を取り巻く諸問題について,受刑者あるいは,検挙者の
年齢,世代及び時代の各要因から分析を加え,その実態を明らかにしようとするものである。
 今年度においては,まず,我が国の犯罪統計及び人口統計を元に,年齢層別に新受刑者率(人口
当たりの,新たに受刑者となった者の割合)を算出し,昭和27年(1952)年以降,戦後50年間にお
ける新受刑者率全体の動向を分析した(5年毎)。
 その結果,判明した事項は次のとおりである。
?新受刑者率は,男女とも,第二次世界大戦中に幼少期及び青年期を過ごした世代において最
も高く,これが近年の中高年受刑者の増加に反映している。戦下の教育不足,敗戦後の挫折・
葛藤・価値の転換等に伴う人格形成の歪みが,何らかの形で受刑者率の高さに影響している
ものと推察される。
?男子の新受刑者率は,団塊の世代においても際立って高く,もともと人口規模の大きい世代
であるだけに,近年の50歳代新受刑者数の急増現象を生んでいる。この世代が高齢者とな
る約10年後には,高齢受刑者が今以上に爆発的に増加することが予測される。
?女子の新受刑者率は,団塊の世代よりはむしろその子どもの世代(第二次ベビーブーム世代)
において高く,近年の女子新受刑者急増の原因となっている。
 今後は,凶悪犯(殺人など),財産犯(窃盗など),粗暴犯(傷害など)薬物犯(覚せい剤取締法
違反など),交通犯(道路交通法違反など)等の罪種毎分析や初入・再入別の分析を詳細に進める
とともに,受刑者のデータだけでなく,検挙者のデータについても同様の分析を進めていきたい。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

市川 守・中村 隆(2003)。受刑者率のコウホート分析,犯罪心理学研究,第41巻特別号,18-19。
(日本犯罪心理学会第41回大会発表論文集)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

市川 守

釧路少年鑑別所