平成71995)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

7−共研−66

専門分類

7

研究課題名

カイコの繭型発現に関係する遺伝的要因

フリガナ

代表者氏名

ナカダ トオル

中田 徹

ローマ字

所属機関

 

所属部局

職  名

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

カイコの繭型は、品種によりかなりの相違がみられるが、これは野生の昆虫からの遺伝分化の過程で生じたものであり、生物の進化を考察する上で一つの重要な手がかりとなると考えられる。そこで複雑に分化したカイコの品種間交雑を行い、繭型発現に関係する要因について遺伝的考察を行う。


著者は、本邦はじめて世界各地で収集したカイコについて遺伝分析を進めており、とくにその世界的な規模での遺伝的分化と、地域品種の形成に関する検討を続行中である。
カイコは、永年にわたって人為的に飼育されており、その間に絹生産のために改良が加えられているが、同時に遺伝学研究のための実験材料昆虫としても有用である。飼育馴化の過程で、その特徴である繭の諸形質について遺伝的分化を生じ、これは生物の進化を考察する上で重要なメルクマークとなる。繭の形はくびれのある俵型、楕円型、紡錘型など複雑に分化しているが、この特徴を画像解析により数量的に把握して、遺伝的発現を明確にするため多変量解析法を用いて、統計遺伝学的分析を続けている。
本年は各種の標識遺伝子を用いて繭型の発現を規定する遺伝的要因を調査した。カイコには28対の染色体があり、詳細な遺伝子地図が作られているので、その成果を利用して適当なマーカー遺伝子を選定して、系統間の交雑後代にみられる各種の表現型分離と、繭型発現との関係を、主として分散分析法より調査した。
その結果染色体レベルで繭重発現への関与がみられるケースが確認されたので、繭型形成の基本となる吐糸や結繭行動への遺伝的解析が可能となるものと解釈できる。これは将来期待される行動の遺伝分析の基礎データとして、重要な意味をもつと考えられる。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

1. T.Nakada A new cocoon color strain, Emeraqld Green (EG), in the Japanese oak silkworm, Antheraea yamamai Int. Jonrnal of Wild Silkmoth 1 (2) 1995
2. T.Nakada Maximum likelifood estimation of recombination parameters between a marker gene and a quantitative trait loci in the silkworm, Bombyx mori L.Acta Sericologica Sinica 21 (in press) 1995

1.中田 徹 アジア温帯および熱帯地域産蚕品種の繭型分析 日本蚕糸学会第65回講演要旨集 1995.4.4
2. T.Nakada Cocoon shape analysis of Chinese strains of silkworm ,Bombyx mori L.Biometrical Symposium of Silkworm 1995.8.25. Zhejiang Agri.Univ.,China
3. T.Nakada The origin of silkworm, Bombyx mori L. and its geneitc differentiation Symposium on the genetics of silkworm 1995.11.28 CSRTI, Mysore, India
4.中田 徹 インド産多化性蚕品種の繭型に関するクラスター分析 日本蚕糸学会第66回講演要旨集 1996.4.3

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

申請者は、現在世界各地に放散しているカイコの遺伝的分化と品種形成に関する研究を続行中であり、そのメルクマールとして繭型に注目している。近年、申請者は簡易で安い画像解析装置の開発に成功して、形態測定を迅速かつ正確に行うことが可能となった。そこで繭型に関係する諸変数を把握して、その統計遺伝学的を行う。すなわち、繭型の異なるカイコの品種間交雑を行い、後代の繭型がどのように推移するかを調査する。この研究を効果的に行うためには、多変量解析やその他の統計的分析の手法の開発について、統計学の専門研究者との共同研究が必要である。以上の研究のため、申請者は日本をはじめインド・中国および韓国などの在来品種の遺伝学的研究調査を続けている。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

釜野 さおり

国立社会保障・人口問題研究所

村上 征勝

統計数理研究所