平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−3

専門分類

1

研究課題名

確率過程の大域的性質の研究

フリガナ

代表者氏名

オオクラ ヒロユキ

大倉 弘之

ローマ字

所属機関

京都工芸繊維大学

所属部局

工芸学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

前年度に引き継ぎ、確率過程の再帰性、保存性を中心に考える。この中で、ディリクレ形式の方法による再帰性の定量的理論の前進を図りたい。特にジャンプを持ったマルコフ過程に対する再帰性の判定条件の一層の整備を図ることを目的としたい。他に極限定理などとの関連も明らかにしたい。


本共同研究では前年度に引き継ぎ、確率過程の再帰性・保存性等の大域的性質を研究対象とした。共同研究者とその周辺で得られてきた新しい成果等を交流する目的で1994年1月28日〜30日に研究集会「確率過程の大域的性質の研究」を開催した。
以下、講演の概略を紹介する。今年度は特にディリクレ形式の方法による再帰性の定量的理論の前進を一つの目標においた。この問題に対しては大倉が容量を用いた再帰性と推移性の判定条件と共にジャンプを持たない場合の精密な上からの容量不等式を証明し、対称マルコフ過程の再帰性や可約性の精密な判定法に応用した。またこの結果と方法に工夫を加えてジャンプを持つ場合にもかなり精密な判定を行えることも同時に示した。また容量の下からの不等式についてはハルナックの不等式との関係が注目され、富崎により関連する不等式、条件間の相互関係の解明が試みられた。
ランダム・ウォークの大域的性質の研究として濱名は昨年度の多重訪問点の個数に対する各種の極限定理に引き続いて、一重訪問点の個数に対する極限定理にまで発展させている。古尾谷はマルコフ・チェインのスペクトル次元が有限摂動により安定であることを示した。また深井は拡散律速凝集(DLA)に関連したランダム・ウォークのポテンシャル核の評価を昨年から発展させて精密化を行った。渡部,佐藤は加法過程の分布のモードの時間発展の特異な振る舞いに関する新しい詳細な結果を得ている。以上の趣旨に基づいて、統計数理研究所共同研究リポート56が成果報告書として刊行されている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

H.Okura, Capacitary inequalities and global properties of symmetric Dirichlet forms,Proceedings of International Conference on Dirichlet Forms and Stochastic Processes,Beijing,1993,掲載予定
Y.Hamana,The law of the iterated logarithm for the single point range of random walk,Tokyo J.Math., 掲載予定

大倉弘之,対称マルコフ過程の大域的性質と容量不等式、日本数学会年会,1994.3.31
濱名裕治,ランダム・ウォークの多重点の個数について,日本数学会年会統計数学分科会特別講演,1994.4.1

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

(1)拡散距離を用いて拡散過程の再帰性に対する定量的把握を試みる。(2)(1)の考え方をジャンプを持ったマルコフ過程に対しても適用する。(3)前年度の共同研究者数人によりオルンシュタイン=ウーレンベック型過程の再帰性の判定条件の整備が進められたが、この結果の一層の精密化を図る。以上の(1)(2)は主にディリクレ形式の方法が有効と考えられ、(3)は主にフーリエ解析の方法によるものである。これらの結果を突き合わすことが有益と考えられる。(4)また、種々の極限定理と再帰性等の大域的性質との関連も調べたい。
以上のような研究には数理統計学の基礎理論と確率過程論との協力が非常に有益であり、当研究所の清水教授、志村助手との共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大島 洋一

熊本大学

清水 良一

統計数理研究所

志村 隆彰

統計数理研究所

富崎 松代

山口大学

濱名 裕治

九州大学

渡部 俊朗

会津大学