平成142002)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

14−共研−2035

専門分類

7

研究課題名

多年生林床草本の空間的個体群動態解析

フリガナ

代表者氏名

シマタニ ケンイチロウ

島谷 健一郎

ローマ字

SHIMATANI Kenichiro

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析系

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

植物は光合成を行うことによって個体を維持し、成長し、繁殖する。このため、光は植物にとっ
て必要不可欠な資源である。隣接する植物個体間には光を巡る競争が存在し、この競争には方向性
がある。すなわち、より上位の空間を占めた個体が光を遮ることによって光資源を独占し、下位の
個体の受光量は甚小となるため,光を巡る競争は植物個体群の構造や動態に多大な影響を与える。
ところで、光を巡る競争が個体群の構造に与える影響について、明るい場所を生育地とする一年生
草本の実験個体群では多くの知見があるが、林床のように光資源が豊富でない環境に生育する植物
の、光をめぐる競争の個体群への影響についての研究例は極めて少ない。さらに、多年生林床植物
は地下器官に貯蔵した物質を成長に有効に使うことから明地の1年生植物とは異なる振る舞いを
することが予想される。本研究は多年生林床植物クルマバハグマについて、個体群構造・動態につ
いての詳細な調査をおこなうことによって、相互被陰が林床植物の個体群にどのような影響を与え
るのか、明らかにすることを目的とする。とりわけ、林床植物の個体群は密度が低いため、相互の
被陰は個体の空間配置に影響を受けると考えられるため、適切な空間的統計解析を選択または開発
することが必要である。
 本年度も、福島県南会津地方の落葉樹林林床に設置されたプロットにおいて、クルマバハグマの
個体群動態の追跡調査および微小環境の測定を行った。まず,7月末から8月はじめに3日間かけ
て、個体群内の光環境の測定を行った。50cm間隔で高さ20cmと50cmの2段階で相対照度を求
めた。その結果、林床草本の個体群内の光環境は均一でないことが明らかになった。つづけて9
月に個体群動態の追跡調査を行った。即ち全個体にマークをつけ直し、前年からの生残・死亡およ
び新規加入個体を確認し、個体のステージ(実生・無花個体・有花個体)の記録、さらに個体のサ
イズ(高さ、葉数、葉面積)と位置の測定を行った。併せて、蓄積されたデータの解析結果の検討
を行った。これまで各個体の葉序を円盤とみなし、高さ・半径・位置から、個々の植物の相互被陰
量を推定し、個体群のサイズ構造と被陰量の間の関係を求めた。さらに被陰量と成長率の関係、お
よび被陰量と死亡率の関係を明らかにし、マルコフ推移行列モデルを適用することを試みてきた。
しかし、個体群内の個体間の相互関係だけでなく、他の植物との相互関係や微小生育地の環境の影
響も無視できない可能性が示唆された。マルコフ過程はサイズクラスごとに個体の振る舞いを平均
化してしまうため、個体の振る舞いをより明確に表現する必要がある。今後は蓄積あれた空間的時
系列データの再検討を行っていく。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)


河原崎里子:コウヤボウキ連植物の林床環境への適応?生理生態学と個体群統計学のアプロー
チ?。植物の生活史研究?解き明かされる植物のダイナミクス。種生物学会編。文一総合出版
(掲載予定)。(第32回種生物シンポジウム『植物の生活史?フィールド研究の現状と今後の
展開』「コウヤボウキ連植物の林床環境への適応」(八王子 2001.12.9.河原崎)で発表した内
容に基づく)
口頭発表
島谷健一郎:森林の空間パターンの時間発展を見たい?群集及び遺伝構造,第50回日本生態学会大会,平成
15年3月(大会プログラム P21)。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

河原崎 里子

独立行政法人 森林総合研究所

堀 良通

茨城大学