平成282016)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

28−共研−1006

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

8

研究課題名

多項式カオス展開を用いた沿岸域流動水質モデルのパラメータ最適化技術の開発

フリガナ

代表者氏名

イリエ マサヤス

入江 政安

ローマ字

Irie Masayasu

所属機関

大阪大学

所属部局

大学院工学研究科地球総合工学専攻

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究は沿岸域における水環境シミュレーションの再現性向上のために,多項式カオス展開を活用したモデルパラメータの推定と最適化を行い,もって,モデルを最適化する手法の構築を行う.近年,流動水質モデルが細緻化することにより,調整しなければならいモデルパラメータの量は増大しており,パラメータに実験値や観測値を用いたとしても,モデルに不適合な場合や,実験値や観測値がない場合もある.その場合,モデル使用者の経験に依る割合も大きくなり,パラメータ調整に非常に多くの時間を要しすることとなる.本研究では,計算結果のポストプロセッサとして,多項式カオス展開を行うことにより,最適なパラメータを発見する方法を用いて,水環境シミュレーションの高度化を図ることを目的としている.

前年度から大阪湾を対象に,植物プランクトンの増殖速度と沈降速度について最適化を行っている.流動水質モデルは海洋モデルRegional Ocean Modeling System (ROMS) を使用し,水質のサブモデルにはFennel et al.(2006)をもとに大阪湾向けに改良したモデルを使用した.前年度の検討では上記の増殖速度および沈降速度の最適化について実施し,およその再現性を得ていたが,感度解析及び精度検証を改めて実施し,クロロフィル年間変動についてのより良い再現性を得た.国土交通省による大阪湾水質定点自動観測結果および大阪府立環境農林水産総合研究所で実施されている赤潮に関する調査結果と比較すると,植物プランクトンのブルーム発生時に増殖速度が増大し,ブルーム終息期に,沈降速度が増大することがモデルにおける最適値でも再現され,実現象(例えば,栄養塩枯渇時の休眠期細胞の生成)を良く表す結果となった.また,この結果から,無機態窒素濃度を関数とする新たな沈降速度算定式を提案した.ただし,算定式によって得られる値と多項式カオス展開によって得られた最適値のあいだには,クロロフィル濃度が低い冬季等で,いぜんとして乖離が残っており,引き続き,検討を進める予定である.
 本年度得られた結果をとりまとめ,下記に示す国際会議において成果報告を実施した.
 本研究のように,モデルの最適化から,生態系内の生物の素過程について着目(フィードバック)できるのは,シミュレーションおよび統計科学的手法の有意義な利用法の一つであると考えており,引き続き本研究を深化させたいと考えている.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Masayasu Irie, Kohei Oda, Teruhisa Okada, Jann Paul Mattern, and Katja Fennel : Optimization of time-dependent model parameters by polynomial chaos expansion for a better model representation of chlorophyll in Osaka Bay, Japan, ASLO2017 Aquatic Sciences Meeting, Honolulu Convention Center, Honolulu, Hi USA,Feb 26-Mar 3, 2017


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催実績はありません.

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岡田 輝久

大阪大学

小田 航平

大阪大学

廣瀬 文明

大阪大学