平成81996)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

8−共研−77

専門分類

7

研究課題名

カイコの繭型の遺伝的分化に関する研究

フリガナ

代表者氏名

ナカダ トオル

中田 徹

ローマ字

所属機関

 

所属部局

職  名

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

カイコには多くの地域品種があり、品種によって繭の形が異なるという特徴がある。これは野生の昆虫から現在のカイコとなった遺伝分化の過程で生じた現象であり、生物の進化を考察する上で重要な手がかりになると思われる。そこで繭型の異なる品種間交雑を行い、後代に示される各種の表現型を統計遺伝学的な手法で解析して、遺伝的分化と品種形成について考察を加えることを目的とする。


カイコは、数千年以前に中国の楊子江流域で野生昆虫から飼育化が始まり、以後長い年月をかけて世界各地に伝播したものと考えられている。その過程で多くの品種分化が生じて、現在アジアの温帯及び熱帯地域を中心として、各地域に適応した品種が継代されている。
著者は、生物進化を調査するための材料昆虫として、このカイコに着目して、各種形質の遺伝学的研究を続行中であるが、その形質のうち、カイコの特徴を端的に示している繭形質の遺伝的発現に興味をもち、多変量解析等の数理統計学的分析を行っている。
繭形質のうち、その重量は絹生産のための基本的な形質であり、育種学すなわち品種改良の立場から、古来多くの研究が行われている。しかしながら、その形に関する研究は、形の計測が難しいこともあり、ほとんど手がつけられていない。著者は近年、パソコンとCCDカメラを連結した簡易画像処理システムを開発し、従来困難であった形の計測を容易にすることに成功したので、基礎生物学の立場から、その数理的解析を試みている。
そこで、本邦をはじめとして、アジア各地の中国やインド等のカイコの保存品種の繭型の計測とその統計遺伝学的研究を進めている。本年度は中国のシルクロード地方やインドの東北部を訪れ、ここで保存継代されているカイコの品種調査を行って、繭型の違いによりその品種分化の過程を推論した。
さらに明年度以降も世界各地の保存品種の調査を行い、グローバルな視点で、この問題を追究したい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

T. NAKADA and HE. K. XIA Maximum likelihood estimates of recombination parameter between a marker gene locus and a quantitative trait locus in the silkworm, Bombyx mori L.Acta Sericologia Sinica, 22 (1), 31-35, 1996.3
P. RAMA MOHANA RAO and T. NAKADA Clustering of polyvoltine breeds of the silkworm, Bombyx mori by image processing method: Significance of cocoon shape variables.Indian Journal of Sericulture (in press), 1997

中田 徹 インド多化性蚕品種の繭型に関するクラスター分析。日本蚕糸学会第66回大会講演要旨集 23、1996.4
中田 徹 カイコの繭型発現に関する多変量解析と遺伝分析への応用。日本蚕糸学会第67回大会講演要旨集 68、1997.4
T. NAKADA On the inheritance of new cocoon color "Emerald Green (EG)",in the Japanese oak silkworm, Antheraea yamamai Abstracts of 19th International Congress of Entomology, 426 Firenze, Italy, 1996.8

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

申請者は、現在世界各地にあるカイコの地域品種の遺伝学的分析を行っているが、品種の特徴を示す一つのメルクマールとして繭型に注目している。形の計測は労力を要するため、データ収集が難しいが、近年申請者は簡易な画像解析システムの開発に成功したので、これを用いて繭型の測定を行っている。現在までに、品種間の繭型の相違や品種内の雌雄差などの検討を行ったので、さらにこれを発展させて、繭型の異なる品種間交雑を行って後代の分析を続行中である。この研究を効率的に行うには、多変量解析や各種の統計分析の手法を利用することが必要であり、統計学の専門研究者との共同研究が要請される。現在、申請者は日本の在来品種をはじめ、中国・韓国およびインドの地域品種について、各国の研究者と共同で調査を続行中である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

村上 征勝

統計数理研究所