昭和621987)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

62−共研−66

専門分類

7

研究課題名

子宮がん検診の効率化に関する数学モデルの作成

フリガナ

代表者氏名

ワタナベ マサシ

渡辺 昌

ローマ字

所属機関

国立がんセンター

所属部局

疫学部

職  名

部長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

子宮癌検診の有力な手法である細胞診はclassIからVまでにわけられ,classIII(疑陽性)は経過観察の対象になる。このうち癌になるもの,陰性になるもの,なを経過観察を要するものなど様々であるが,過去にclassIIIでfollow−upした症例約2000例を解析し,検診の有効な間隔を推定する数学モデルの作成を研究目的とする。


子宮癌検診の有力な手法は細胞診であるが検診の効率化の点からも,ハイリスクグループの確認は重要である。そこで,まずヒトパピローマウィルス感染状態別に若年者子宮頚癌の危険因子を解析した。ヒトパピローマウィルス(HPV)は必ずしも子宮頚癌全例に検出されるものではないが,若年発症例にて検出率が高いことが知られている。そこで,HPV感染の有無別に他の危険因子の関与について検討した。対象は最近10年間に国立がんセンター病院に於て手術をうけた東京及びその近県に居住する40歳未満の子宮頚癌患者で病理学的に扁平上皮癌の確定診断を受けた者である。ホルマリン固定されパラフィンブロックに保存された腫瘍組織よりDNAを抽出し,HPVのType16と18のプローブを用いたDot hybridizationの手法を用いてHPV感染の有無を検索した。HPV感染の有無の情報に関してはブラインドの状態で,結婚・妊娠,喫煙に関する情報を病歴より抽出した。
国立がんセンターを受診した婦人科検診をうけた女性のうち,要経過観察になった患者は2000例程度であるが,HPV検索を初めた段階であり,結果的に終了した27例の内,11例(40.7%)でType16または18が陽性であった。年齢で分けると,35歳以下の13例中8例(62%)で陽性であったのに比べ,36歳以上の14例中では3例(21%)のみしか検出できず,若年者において有意に高くHPVが検出された。
HPV genome(+)と(−)各症例について結婚,妊娠,出産,自然流産,人工流産および喫煙経験などを調べ,リスト解析を行った。ただし,これらの情報はカルテより検索した。その結果,結婚・自然流産の経験はHPV(+)群に多く,妊娠・出産・人工流産の経験はHPV(−)群に多かった。特に,人工流産の既往はHPV(−)で75%を占めたのに対し,HPV(+)群では36%に過ぎず,統計学的にも有意で境界値を示した。喫煙歴については両群とも約半数に認められた。これとHPV感染,人工流産経験,妊娠経験などの間に相関は認められなかった。数学モデルによるリスク解析の結果HPV(−)群は,高齢で妊娠回数,人工流産の回数が多いことが示された。ただし高齢と人工流産の回数とを検討した結果,人工流産回数のHPV(+)群とHPV(−)群とにおける差異は年齢の差異によるものではないことが確かめられた。以上,まとめると,少数例の検討ではあったが,若年で発症した子宮頚癌においてはHPVの関与が強いこと,HPV(−)群においては人工流産や妊娠などの様な子宮に対する機械的刺激や生理的変動を与えうる要因との関連が強いこと,喫煙はHPVの有無にかかわらず関与しているらしい事が示された。発癌のプロモーターとしての喫煙については明確には示されなかった。今後例数を増やすとともに,HPVを指標としたスクリーニングからの検診効率へと研究を進めたい。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

昭和62年度関係論文(一部)
JJCR vol78 P162−169
JJCO vol17 P309−317
JNCI vol79 P435−441
本研究についての報告論文は
・昭和62年度厚生省広畑班分担研究に提出中
・JJCOに投稿中


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

国立がんセンターに受診した婦人科検診をうけた女性のうち要経過観察になった患者は2,000例程あり,データベースとなっている。この中から経時的観察でがんに進展した例もあり,様々な観察時点であるために,どのような追加検診をしたらよいかを比例ハザードモデルあるいは他のより適切なモデルが存在するかどうかを検討する。
数学的モデルの作成,検定に統計数理研との共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大野 優子

(財)東京都神経科学総合研究所

駒澤 勉

統計数理研究所

津金 昌一郎

国立がんセンター研究所

恒松 隆一郎

国立がんセンター病院

馬場 康維

統計数理研究所