平成172005)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

17−共研−1027

専門分類

3

研究課題名

市場データを利用した株式流動性の統計的モデリング

フリガナ

代表者氏名

モリヤス ヒロシ

森保 洋

ローマ字

Moriyasu Hiroshi

所属機関

長崎大学

所属部局

経済学部

職  名

助教授

所在地

TEL

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E-mail

URL

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は、日中の取引情報がすべて記録されているティック・データから、株式市場の流動性指標を作成し、時系列モデルとして定式化することである。さらに、作成した時系列モデルを利用して、株式投資単位の引き下げ、いわゆる「くくり直し」が、株式の流動性の向上につながるかどうかを実証分析によって明らかにすることである。
研究の第1段階として、必要なティック・データを容易に抽出できるデータ・ベースを作成した。これは、本研究で利用するティック・データのサンプル・サイズが非常に大きく、株式投資単位の引き下げを行った企業の任意の期間のティック・データを容易に抽出することを可能にするためである。
次にティック・データを用いた流動性指標の作成を行った。流動性は、取引価格と均衡価格の差を表すtightness、現在の価格に影響を与えずに取引できる株式数量を表すdepth、取引執行にともない変動した価格がもとの価格に戻る速さを示すresiliencyの3つの軸で捉えられることが一般的であるが、本研究ではtightnessとdepthに着目し、流動性指標の作成・分析を行った。具体的には、tightnessを表す指標として、ティック・データから1分間隔のビッド・アスク・スプレッドを、depthを表す指標としてEngle and Lange(2001)のVNETを簡略化したSVNETを作成した。これは一定の価格変動が起きる間に売買された株式の数量の合計を表す指標である。
そして、これらの流動性指標の時系列特性に関する分析を行った。いくつかの株式のビッド・アスク・スプレッドについては、株式収益率のボラティリティや単位時間あたりの取引回数などと同様に日中季節変動性が存在することが示唆された。また、観測値が非負値をとり、Overdispersionを持つ時系列データのモデル化に適当とされるMultiplicative Error Model(MEM)とStochastic Conditional Duration Model(SCDM)の推定を試みた。推定結果から株式のビッド・アスク・スプレッドは過去の影響を強く受けることが示唆された。しかし、基本的なMEM、SCDMでは残差に関する診断テストをクリアせず、日中季節変動性の除去を含めたモデルの改良が必要であることが明らかになった。また、株式投資単位の引き下げは、ビッド・アスク・スプレッドを縮小させる効果があることが示唆された。
SVNETについては、個別株式によってその変動特性が大きく異なり、一般的なモデリングが困難であることが明らかになった。今後は企業規模など個別企業の特性を考慮した変動特性のモデル化に取り組む予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表
(予定)「株式投資単位引き下げと流動性−ティック・デ−タを利用した実証分析−」,生活経済学会第22回研究大会,2006年6月10日,小樽商科大学

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川崎 能典

統計数理研究所

須齋 正幸

長崎大学