平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−81

専門分類

7

研究課題名

遺伝子構造データ解析のための統計的方法の開発

フリガナ

代表者氏名

ハセガワ マサミ

長谷川 政美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

予測制御研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年、遺伝子組み換え技術とDNA塩基配列決定法の進歩に伴い、各種遺伝子構造データが急速な勢いで蓄積されつつある。そのようなデータから生物あるいは遺伝子の進化に関する新しい知見を得るための方法を開発することが本研究の目的である。


前年度までに、アミノ酸配列データから最尤法によってたんぱく質の進化系統樹を推定するための方法、を開発した。今年度は、さまざまなアミノ酸置換の確率モデルを比較して、モデルに改良を加えた。これまでは、アミノ酸置換確率モデルとして、経験データをもとにDayhoffら(1978)によって作られたものが用いられてきたが、最近、Jonesら(1992)はその後蓄積した大量のデータをもとにしてアミノ酸置換確率を改訂した。
われわれは、このJonesらモデルのほかにもさまざまなモデルをAICの規準で比較し、Jonesらのモデルが広い範囲のたんぱく質について、良い近似になっていることを示した。
コンピュータ・シミュレーションにより、仮定した置換モデルが現実と食い違っている場合に、最尤法による系統樹推定がどの程度ロバストであるかを検討した。
最尤法によって推定された系統樹のブートストラップ確率を求めるための簡便法(RELL法、MND法)が実際に良い近似になっていることを示した。さらに、ここで開発された方法を実際のデータに適用し、生物学的な新たな知見を得た。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Adachi, J. and Hasegawa, M., Amino acid substitution of proteins coded for in mitochondrial DNA during mammalian evolution, Jpn. J. Genet., 67・3, June 1992.
Hashimoto, T., Otaka, E., Adachi, J., Mizuta, K. and Hasegawa, M., The giant panda is closer to a bear, judged by α- and β-hemoglobin sequences, J.Mol. Evol., 36・3, March 1993.
Hasegawa, M., Hashimoto, T., Adachi, J., Iwabe, N. and Miyata, T., Early branchings in the evolution of eukaryotes: Ancient divergence of Entamoeba that lacks mitochondria revealed by protein sequence data, J. Mol. Evol., 36・4, April 1993.

足立 淳,長谷川政美,蛋白質系統樹の最尤推定プログラム−−PROTML,日本分子生物学会年会,1992年12月.
Hasegawa, M., Molecular approach to the early evolution of eukaryotes, International Symposium “Current View on the History of Organisms"(Kawasaki, Japan), March 1993.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

遺伝子構造データから生物の系統進化や遺伝子進化に関する知見を得るため、最尤法によるデータ解析法を開発する。この際、系統樹のトポロジーの推定と分岐年代の推定という2つの問題を扱う。
4種類のDNA塩基の間の置換、あるいは20種類の蛋白質アミノ酸の間の置換に関して様々な確率モデルを試み、AICに基づいたモデル選択を通じて実際問題に適用できるような方法を確立する。さらに実際のいろいろな問題に適用することによって、方法論上の問題点を明らかにする。本研究は、生物学・医学などの広範囲の領域と深く関わるので、いろいろな分野の人々の共同研究として組織することが是非とも必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

岸野 洋久

東京大学

橋本 哲男

統計数理研究所

細谷 将彦

琉球大学

宮田 隆

京都大学

矢野 隆昭

昭和大学