平成232011)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

23−共研−1025

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

子どもの社会性に関する発達行動遺伝学的研究

フリガナ

代表者氏名

サカイ アツシ

酒井 厚

ローマ字

SAKAI ATSUSHI

所属機関

山梨大学

所属部局

教育人間科学部

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は、発達精神病理学、発達心理学、行動遺伝学、教育社会学の統合的観点から、幼児期の子どもがいる家庭を対象とした4年間の縦断研究を実施し、家庭、教育機関(園・学校)、地域の相互関係性やそれぞれのあり方が、幼稚園期から小学校期への子どもの社会性の発達にどのように影響するのか、子どもの個人的特性(気質・遺伝・問題行動の萌芽的形態)との相互作用を含めて検討していくことである。
平成23年度は、3歳以上の幼児がいる約340家庭に質問紙調査を実施した。主な質問項目は、人口統計学的変数(出生順位、性別、家庭の社会経済的要因)、子どもの社会性変数(仲間の数、仲間と遊ぶ頻度、共感・協調性、能動・自己主張性、問題行動など)、子どものパーソナリティ変数(気質・性格)、環境変数(親の養育態度、親の抑うつ傾向、家族の凝集性、子どもの仲間関係、保育所・幼稚園を含む近隣地域の子ども関連施設の利用実態など)に関する内容であった。
 今回は、幼児期における親の養育態度ときょうだい関係の種類に注目し、子どもの社会性との関連についての2つの研究を行った。第1研究では、双生児きょうだいのいる家庭を対象に、母親の養育態度ときょうだいの性別の組み合わせの違いが子どもの自己主張性とどのように関わるかについて検討した。母親の養育態度は、子どもが同性のペアである場合の方が、異性ペアよりも二人を同じように扱う意識が高いことが示された。また、養育態度ときょうだいの性別とのマッチングでは、男児ペアでは母親が二人を同じように扱うことが、異性ペアでは母親が二人を同じように扱わないことが子どもの仲間関係における能動・自己主張性の高さと関連していた。その一方で、女児のペアの場合には、母親による二人の養育の仕方との間に関連は見られなかった。以上から、母親の養育態度はきょうだいの性別の組み合わせによって関わり方が異なり、子どもの社会性を高める母親の養育態度のあり方も性別の組み合わせに応じて異なることが示唆された。
第2研究では、子どもの親による子どもの仲間関係を支援する態度(ピアマネージメント)に焦点をあて、単胎児を含めたきょうだい関係の種類から検討した。まず、母親による子どものピアマネージメントは、子どもの仲間数とのあいだに有意な正の相関が見られ、ピアマネージメントの高さが子どもの仲間数の増加に関わることが確認された。その上で、ピアマネージメントが子どものきょうだいの種類によって異なるかを検討したところ、一人っ子、単胎児きょうだい、双生児きょうだいのいずれの間にも有意差は見られなかった。つぎに、きょうだいのいる家庭に注目して母親のピアマネージメントに関わる要因を検討したところ、双生児きょうだいのいる家庭において母親の外向性がピアマネージメントの高さと関わっていた。これは、積極的に他者と関わるタイプの母親が、地域にある子育て支援の取り組みなどに通う実態を反映した結果であると思われ、親同士の集まりが、子どもにも仲間を増やす良い機会となっていることが伺われた。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

前川浩子・酒井厚・眞榮城和美・松本聡子・則定百合子・上長然・酒井彩子 2012 子ども期の仲間関係における対人関係能力の発達-親による双生児きょうだいの育て方と子どもの友達づきあいの観点から-, 金沢学院大学紀要,文学・美術・社会学編,10

酒井厚・前川浩子・眞榮城和美・松本聡子・則定百合子・上長然・酒井彩子 2012 親による双生児きょうだいのピアマネージメントに関わる要因の検討‐親と子どもそれぞれのパーソナリティに注目して‐,日本双生児研究学会第26回学術講演会

前川浩子・酒井厚・眞榮城和美・松本聡子・則定百合子・上長然・酒井彩子 2012 子ども期の仲間関係における能動・自己主張性の発達‐親による双生児きょうだいの育て方と子どもの友達づきあいの観点から‐, 日本双生児研究学会第26回学術講演会


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾崎 幸謙

統計数理研究所