平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2033

専門分類

7

研究課題名

水産資源に対する観察データ解析のための統計推測

フリガナ

代表者氏名

ショウノ ヒロシ

庄野 宏

ローマ字

Shono, Hiroshi

所属機関

水産総合研究センター・遠洋水産研究所

所属部局

熱帯性まぐろ資源部数理解析研究室

職  名

研究員

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

70千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

水産資源の利用と管理を適切に行うには、資源管理の単位となる系統群の判別と分布状況を解明し、系統群の死亡率、加入率の量的変化や、種間の相互関係、さらには環境の影響を把握していかなければならない。一般に、我々観測者は水産資源の生息域を直接観測できない場合が多く、資源解析のために利用される調査データおよび漁業データは、観測値のバイアス、ランダムサンプリングからのズレ、データを取得する状況の不均一性に起因する超過変動など、解析を困難にする要因を多く抱える傾向にある。したがって、統計的推測を行う上で土台となるデータとモデルの不確実性は大きく、そのため推測も複雑で困難となることが多い。

 そのような水産資源を対象とした解析のアプローチとして、最尤法やベイズ的手法をはじめ、最近ではセミパラメトリックモデル、推定方程式、経験ベイズ法など多くの統計手法が利用されている。また、情報量規準をはじめとするモデル選択手法や、その不確実性を考慮した資源解析手法も活発に議論されている。

そこで本研究では、水産資源に対する観察データの性質を考慮した推測方法に関して改めて議論するとともに、適切な統計的手法の選択や新たな推測方法の提案について検討を行った。今年度の共同研究で取り扱った具体的なテーマとして、「統計モデルとデータマイニング手法によるCPUE解析」、「クロミンククジラ資源量の調査方式に伴うバイアスの補正」、「ベイズ法による水産資源の評価」、「多変量混獲データの特徴量の抽出」などについて議論を深めた。

特に、CPUE(catch per unit effort:単位努力当たり漁獲量)の標準化について、確率過程の概念によるTweedie分布やDelta型2段階モデルを使用し、ゼロの多いサメ類など混獲データの解析やクロスバリデーション等の計算機実験を行った。その結果、これらのモデル選択パフォーマンスが従来広く用いられているad hocな共分散分析法に比べて優れていることが確認された。

今後は水産資源解析における実験計画の精密化、状態空間モデルなども含めたベイズ的方法論の積極的な適用、そして既存の手法に縛られないモデルの考察のために、パラメトリックとノンパラメトリックの方法論的な融合を積極的に行う必要がある、と考えている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Kitakado T., S. Kitada, Y. Obata and H. Kishino. Simultaneous estimation of mixing rates and genetic drift under successive sampling of genetic markers with application to the mud crab (Scylla paramamosain) in Japan
Genetics, 173, 2063-2072, 2006
Kitakado, T. S. Kitada, H. Kishino and H. J. Skaug. An integrated-likelihood method for estimating genetic differentiation between populations.
Genetics, 173, 2073-2082, 2006
Okamura, H., S. Minamikawa, and T. Kitakado. Effect of surfacing patterns on abundance estimates of long-diving animals. Fisheries Science 72(3), 631-638, 2006
Kawakita, M., M. Minami, S. Eguchi and C. E. Lennert-Cody. An introduction to the predictive technique AdaBoost with a comparison to generalized additive models. Fisheries Research 76, 328-343, 2005
南 美穂子. Zero-inflated モデルによる混獲データ解析.
2005年度統計関連学会連合大会講演報告集p.340, 2005
  袴田高志、松岡耕二、西脇茂利. 調査対象生物の採集を伴うライントランセクト法による資源量推定法. 平成17年度水産学会講演要旨(東京)p.187, 2005
Shono, H. Is model selection using Akaike's information criterion appropriate for CPUE standardization in large samples? Fisheries Science, 71(5). 978-986, 2005.
庄野 宏. モデル選択手法の水産資源解析への応用−情報量規準とステップワイズ検定の取り扱い−. 計量生物学. 27(1), 55-57, 2006
庄野 宏・椿 広計. ニューラルネットワークによる水産資源解析−CPUE予測と要因分析の試み−.計量生物学. 27(1), 35-53, 2006

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

テーマ  様々な統計モデルの水産資源解析への適用について
開催期日 平成19年2月23日(金)
開催場所 統計数理研究所 研究室
参加者数 16人

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

江口 真透

統計数理研究所

岡村 寛

水産総合研究センター・遠洋水産研究所

北門 利英

東京海洋大学

袴田 高志

日本鯨類研究所

平松 一彦

東京大学

南 美穂子

統計数理研究所

吉岡 耕一

国士舘大学