平成21990)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

2−共研−12

専門分類

1

研究課題名

信頼性理論に関連した分布の特徴づけと多変量化

フリガナ

代表者氏名

ヤマグチ ミツヨ

山口 光代

ローマ字

所属機関

福井大学

所属部局

教育学部

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

数理統計学,特に多変量統計解析では,分布論を展開する場合,正規分布から出発することが多い。しかし信頼性統計や生物統計では,指数分布,ガンマ分布,対数正規分布,又は,極値分布等の正の値をとるゆがんだ分布が用いられる。本研究では,これら信頼性理論に関連した分布の性質を調べて,特徴づけを行ない,かつ,これらの分布の多次元への拡張を考察したい。


この共同研究は以下のように実施されました。
通常は,これまでに各々が行ってきたそれぞれの研究について,個別に研究を行い,11月末と2月末に,高橋,山口は貴研究所へ出張し,清水と3人で共同研究会を開きました。その際,各々の研究での信頼性に関連した分布の特徴を分布論の立場から発表し合い,質疑・応答・討論を行いました。
3人の研究状況,成果は次のようになります。
清水は,r.v.Zとそれに独立で分布Gに従うr.v.σに対する尺度混合X=σZの分布Fを調べてきました。今回は,Fのpdfを,Gのモーメントに関する点で展開したときの誤差項の評価を行いました。これを利用して,Zが指数分布,正規分布,多変量正規分布に従うとき,実軸上での任意のボレル集合上でのXの確率を近似的に得ようとしています。
高橋は,多変量極値分布について,次の結果を得ました。多次元分布が周辺独立な多変量極値分布の吸引領域に属するための簡単な必要十分条件を求め,Berman(1961,1962),Galambos(1987)の結果を拡張しました。totally dependentな多変量極値分布の吸引領域についても同様な結果を得ました。さらに,多変量分布が周辺独立な多変量極値分布になるための必要十分条件を考察しました。
山口は,観測値と,母集団との近さを,その母集団の標本を利用する場合に,予測的な最尤方式から導出される距離関数で表すことに関心を持ち,その分布論を扱ってきました。今回,異なる分散・共分散行列をもつ多変量正規母集団の場合に,その外距離の分布を考察し,距離関数の漸近的な挙動を調べました。この結果から,清水の正規乱数を利用して,外分布の具体的な数値を得ようとしています。
共同研究会における清水の確率論に基づいたコメントは,高橋,山口にとっては非常に有用であったし,清水にとっては,極値分布論や,標本分布論は興味深いものであったので,お互いの研究の接触領域を広くしました。今回は,各々の成果にとどまりましたが,これを続けて,共通の成果を求めようと予定しています。
この他に,Reduceを使用して,パソコンによる数式処理を経験したこと,貴研究所の方々と,自由に討論が出来たこと,及び文献の情報が得られたこと等,特に,高橋,山口にとっては,非常に有益な共同研究でありました。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

学会発表
高橋倫也:極値統計量の漸近挙動について
1991年度,日本数学会年会,統計数学分科会特別講演


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

これまでに,清水,山口,高橋はそれぞれ分布の特徴づけ,多変量判別統計量の分布,一次元極値分布族というように分布に関連した研究を行ってきた。これらの経験を持ち寄って,信頼性理論に関連した分布論の研究を次のように行いたい。
(1).特にガンマ分布,極値分布を中心に取り上げて,その性質を調べることにより,これらの分布の特徴づけを行う。
(2).これらの分布の多次元への拡張を行う。
(3).その結果に関連したシミュレーション実験,又,よく知られているデータの分析を計算機を用いて行う。
そのためには,文献資料と,計算機の利用に便利な統計数理研究所での共同研究が最も適切である。研究経費として,共同研究者による討論,情報交換のための旅費,計算機利用のための費用,関係資料費を使用する。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

清水 良一

統計数理研究所

高橋 倫也

神戸商船大学