平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−25

専門分類

3

研究課題名

臨床における経時データの解析

フリガナ

代表者氏名

ヤフネ アキフミ

矢船 明史

ローマ字

所属機関

北里研究所バイオイアトリックセンター

所属部局

臨床薬理部

職  名

医師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

薬物動態学的データなどのような反復測定された臨床データの解析においては、データの経時的なプロフィールの個体差を、統計学的モデルを規定するパラメータの個体間変動として、パラメータの分布という形で解析に導入するベイズ的アプローチが非常に有効な解析手段となる。本研究では、様々な臨床の経時的データに対して、ベイズ的アプローチを中心とした統計学的解析方法の研究を目的とする。


昨年度までの本共同研究を引き継ぐ形で,本年度の共同研究ではBootstrap法を利用したパラメータの信頼区間推定を行い,従来からの漸近正規性に基づく信頼区間の推定結果との比較検討を行った.
実際の臨床データでは,身体的負担および倫理的観点から一被験者から得られるサンプル数は限られたものになる.臨床データ解析では,この限られたサンプルに対して,非線形で複雑なモデルを用いた解析が行われることが多く,薬物動態解析などがその代表例である.このような場合,従来からの漸近正規性に基づいたパラメータの信頼区間推定には問題が生じる可能性が高い.
本共同研究では,Population PharmacokineticsにおけるPopulation Parameter推定の実例を通して,この問題点を具体的に指摘した.この研究論文については,Statistics in Medicineに掲載が決定している.
また本年度の共同研究では,臨床試験における測定時点の選択・変更という問題にも取り組んだ.
実際の臨床試験においては,一被験者から得られるサンプル数が限られるため,この限られたサンプルをどの時点で行うべきか,すなわち測定時点の選択が非常に重要な問題となる.さらには,一度設定された測定時点に付いても,臨床試験の進行に伴って得られる新たな情報に基づき,測定時点を適宜変更する必要が生じる場合がある.
本年度の共同研究では,実際の臨床試験における血中薬物動態の測定時点を例として取り上げ,この問題に関する研究を行った.次年度以降の共同研究においても,この問題に付いてはさらに研究を継続する予定である.


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Yafune, A., Takebe, M. and Ogata, H. (1998). A Use of Monte Carlo Integration for Population Pharmacokinetics with Multivariate Population Distribution, Journal of Pharmacokinetics and Biopharmaceutics, 26, 103-123.
Yafune, A. (1998). A Simple Numerical Method for Calculating the Measures of Mean Prediction Error and Mean Squared Prediction Error in Bayesian Pharmacokinetic Est imation, Japanese Journal of Clinical Pharmacology and Therapeutics, 29, 525-533.
Yafune, A. and Ishiguro, M. (1998). Kullback-Leibler Information Approach for Modifying Pharmacokinetic Sampling Schedules in Clinical Phase I Trials, Research Memorandum No.679, The Institute of Statistical Mathematics.
Yafune, A. (1999). Application to Pharmacokinetic Analysis, The Practice of Time Series Analysis, (Akaike, H. and Kitagawa, G., eds.), Springer-Verlag, New York.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究内容:血中薬物動態のデータなど、臨床において経時的に反復測定されたデータに対して、個体間差などをパラメータ分布としてモデルに導入するベイズ的アプローチを中心とした様々な解析方法の研究を実施する。共同研究の必要性:本共同研究は昭和63年度より現在に至るまで継続されているものであり、今後もさらに共同研究を進めていく上で、情報量規準などを含めた、統計数理研究所に蓄積されている研究成果を有効に活用していくことが不可欠である。また、ブートストラップ法に代表される、いわゆるcomputer-intensive methodsを有効に活用するためには、大型計算機および並列計算機の利用が必要となる。以上の理由により、統計数理研究所との共同研究が不可欠であると考える。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

松原 敏樹

癌研究会附属病院