平成162004)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

16−共研−2045

専門分類

7

研究課題名

カオス理論による糖尿病血糖値時系列データの短期予測システムの構築と検証

フリガナ

代表者氏名

アリタ セイザブロウ

有田 清三郎

ローマ字

Arita Seizaburo

所属機関

関西医科大学

所属部局

数学教室

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

6 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

糖尿病は代表的な生活習慣病のひとつで、我が国では糖尿病患者数は740万
人を超え、その治療と予防は急務の課題となっている。糖尿病患者において、
血糖値は病態を特徴づける重要な指標であるが、血糖値は日々刻々変動するた
め、その複雑性を数量的に解明することができず、血糖値時系列データの解明
と予測システムが切望されていた。
 我々は糖尿病患者の血糖値データ解析を行ってきたが、ここ数年間の共同研
究の中から、時系列解析の新手法開発の確かな感触を得た。すなわち、血糖値
データのような少数例時系列データから(Δxn>0,Δxn+1>0等)の符号2種
データを再構築し、確率行列空間の中で、カオスやランダム時系列を特性化し
た。
 本研究は、血糖値の経時変化をカオス理論で解明し、生体の複雑系として臨
床応用しようとするものである。本年度ではさらに時系列解析の新手法を糖尿
病時系列データに応用し、?実際の血糖値変動の振るまいを評価し、血糖値を
どこまで短期予測できるかを追及した。また?この血糖値変動の評価と短期予
測を臨床例に基づいて検討し、この予測及び評価システムが臨床的に妥当かど
うかを検証した。
 またこれらの研究成果の一部を本年国際学会CISSM(北京)等で発表を行っ
た。この研究により糖尿病病態改善は血糖値時系列のランダム型から調和型へ
の移行過程で特徴づけるか等の興味ある課題に進展しつつある。実際の血糖値
データ入手について、病院施設の協力が得られることとなり、いよいよ本研究
の臨床検討の段階を迎えている。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

糖尿病患者において血糖値は、病態を特徴づける重要な指標であるが、血糖値
は日々刻々変動するため、その複雑性を数量的に解明することができなかった。
 我々はこの血糖値変動がカオス現象を示していることをカオス理論により解明
した。すなわち、糖尿病で治療コントロールの良い症例は葉巻型のアトラクター
を、中程度のものは三角錐型のアトラクターを、治療コントロールの悪い症例は
球型のアトラクターを示した。これらのカオス現象はリアプノフ関数等で検証さ
れた。さらに(Δxn>0,Δxn+1>0等)による確率行列表現により糖尿病の種々
の型を特徴づけた。これらの研究成果を2004年7月国際学会CISSM(北京)
で、また2004年6月形の科学(理研)、2003年、2002年、2001年国際学会 AIS
(Advanced Intelligent System,Taejon)、国際学会VJMED(日本医療情報学会、
ヴェトナム)でのカオス・セッションで発表を行った。現在、糖尿病臨床データ180
症例を関西医科大学付属病院で入手し、血糖値時系列データの特性解明と血糖値
予測システムの臨床検証を始めている。また、実際の糖尿病患者の血糖値予測は
1〜2ヶ月間の少数例(時系列点数)を基にしなければならず、このような少数例デ
ータにおける時系列解析方法を考案した。この解析方法の臨床応用の可能性につ
いても検討を行っている。
[1]S.Arita,Masahazu Tanemura,et al:Diagnostic System for Diabetes
Mellitus based on the Time Series of Blood Sugar Levels using the
Probability Matrices of Chaos and Randomness,ICSSM(Beijing),2004.
[2]有田清三郎、種村正美:"糖尿病患者の血糖値時系列データのカオス解析",
形の科学,2004。
[3]S.Arita,M.Tanemure,et al:Analysis of blood glucose levels in
diabetes mellitus using probability matrices of chaos and randomness:
IPMU,2003.
[4]S.Arita,et al:Time series analysis of ECG and pulse wave responses:
J.of chaos and its application Vol.1,81-84,2002.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所

西川 光重

関西医科大学

堀 義巳

川崎医療福祉大学

美祢 弘子

川崎医療福祉大学

米田 正也

川崎医科大学