平成51993)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

5−共研−9

専門分類

1

研究課題名

有限グラフ上のランダムウォークとエントロピー

フリガナ

代表者氏名

ヨシダ ヒロアキ

吉田 裕亮

ローマ字

所属機関

お茶の水女子大学

所属部局

理学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

7 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

グラフ上のランダムウォークに付随した確率空間を考える。もちろんランダムウォークの経路とその経路が選ばれる確率で重みを付けるのであるが、この帰納極限を考えることにより無限次元の対象が得られ、この非可換化を考えることにより、有限型の因子環を得る。この環に於ける諸性質(部分環のエントロピー等)を解析することを目的とする。


有限グラフ、特に二部グラフとその各頂点に重みを付けた、重み付きグラフを考える。この重みの付け方は調和的な重みとする。すなわち、この重みによりランダムウォークの進むべき道を選択する確率を定めたとき、始点と終点を決めたならば経路に含まれる辺の数が同じ経路が選択される確率が等しくなるような重みである。
このようなランダムウォークのモデルを考え、始点を一つ固定して、経路の長さごとに離散な確率空間を考える。これら確率空間の族は経路の延長を自然な埋め込みとするような帰納的なシステムとなる。この帰納的極限である無限次元確率空間のある種の拡張を研究の対象とする。ここで、ある種の拡張とは経路を基底とするような無限次元線形空間上の作用素のなす空間と考えることである。いわゆるフォンノイマン環とよばれる非可換な確率空間である。このフォンノイマン環はグラフが連結であればペロン−フロベニウスの定理より最大固有値に対応する固有ベクトルの正値性などより因子環と呼ばれる特殊な環となる。
また一つだけ経路をずらしたものを考えると部分因子環が得られ、これらの環の間のジョーンズ指数、相対エントロピーを考察した。実際、既約な部分因子環(この場合には指数や相対エントロピーが厳密に計算出来る)を構成するためには元々のグラフに組み合わせ論的な条件が要求され一般にどのようなグラフで可能であるかは依然問題である。
本研究ではこの問題に対して実際に条件を満たすグラフの新たな例を与えた。さらに対象グラフの無限グラフへの拡張性も考察した。ある種の無限離散群に付随するケーリグラフ等をその候補と挙げ現在も拡張性の考察を行っている。また、経路を一つずらすことにより部分因子環を構成する方法以外にも、異なったグラフの組を用いて条件を満たすものを探索し、新たな例を構成した。現在このグラフの組で行う方法についても、その拡張性を考察中である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

吉田裕亮 Irreducible subfactor from some symmetric Graphs,Math.Ann.295,1993年5月
      Connections on the Special 5-star Graphs,Nat.Sci.Rep.Ochanomizu Univ.1993年12月


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

平成4年度に引き続き、この課題についての共同研究を行う。関連する研究者が国内に散在しているので、一同に集まっての研究討議や研究動向の調査等を行う必要がある。そのため共同利用機関である統計数理研究所の共同研究の一環として、この分野の研究を申請している次第である。
平成5年度は扱うグラフを有限グラフに限らず適当な条件を持った無限グラフにまで拡張したいと思っている。例えばtreeのような、再帰的に定義されるグラフなどが候補として考えられる。最も簡単な無限グラフである直線上のランダムウォークは2項分布が対応していることから、ある種の離散分布との関連も期待される。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

市原 亮

奈良工業高等専門学校

岡崎 卓

統計数理研究所

梶原 毅

岡山大学

河上 哲

奈良教育大学

渚 勝

千葉大学

渡辺 恵一

新潟大学