昭和601985)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

60−共研−24

専門分類

5

研究課題名

ランダムな系における相転移の可能性とそのモンテカルロ法の研究

フリガナ

代表者氏名

タネムラ マサハル

種村 正美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

2 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

空間構造やつながりにランダムネスをもち,かつ内部自由度(以下スピンとよぶ)をもつ系において,スピン配列のあり方が上記のランダムネスとどう係わっているかが,いま統計物理学の分野で重要な問題として浮かび上っている。われわれはスピン配列の秩序状態の形成すなわち相転移の可能性を構造のランダムネスとの関係で調べたい。
またそのための有効な計算機シミュレーションの手法を研究することもわれわれの目的である。


ランダムな空間構造やつながりを持ち,且つ内部自由度(スピンと呼ぶ)を持つ系において,スピンの配列状態が構造のランダムネスとどう関わっているかは統計物理学の分野で重要な問題とされている。特に近年この問題が注目されているのは,従来の強磁性体,反強磁性体などと異なった,スピングラスと呼ばれる磁性体が10年程前に実験的に得られたことと,この相が出現する理論的根拠が従来の理論では説明のつかない新しいタイプの相であること,そして制御可能なモデルに対して計算機シミュレーションが行えることなどがその理由と考えられる。
本研究はスピン配列の秩序状態の形成,即ち相転移の生ずる可能性とその条件を構造のランダムネスとの関係に力点を置いて調べるものである。具体的に考察したのは次の二種類の問題,即ち[i]アモルファス反強磁性イジングモデル,[ii]ランダムボンドXYスピンモデルである。これらのモデルを記述するハミルトニアンの一般形は〓である。このような内部自由度を持つ系は従来より統計学者が空間パターンの統計の問題として議論しており,一般性のある問題である。
磁性を担ったイオンが空間的にランダムな配置をとっているアモルファス反強磁性体においては,通常の反強磁性体の規則相であるネール状態(Isingモデルでは↑スピンと↓スピンが交互に並んだ状態)が磁性イオンの配置のトポロジカルな乱れと矛盾を生じ,フラストレーションの効果が現れる。我々は剛体円板のランダム充填構造を選び,〓の取り方としてボンドの二通りのつながりを考察した。そして,系の振舞いがボンドのつながり方に大きく影響することが分かった。スピンがXY平面の格子点上で回転する場合は,ボンド〓が±〓の値をランダムに取るときフラストレーションが現れる。それには符号を含めてカイラリティという量で特徴づけられる。計算機シミュレーションにより,このモデルにおいてカイラリティに関する新しい相転移が現れる可能性が示唆された。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・学会発表
60年10月 川村・種村「XYスピングラスのモンテカルロシミュレーション」
日本物理学会秋の分科会
60年10月 川村・種村「2次元アモルファス反強磁性体のモンテカルロシミュレーション」
日本物理学会秋の分科会
・論文発表
H.Kawamura & M.Tanemura(1985)“Monte−Carlo Studies of the Two−Dimensional Random−Bond XY−Model−A Chiral Spin Glass”
J.Phys.Soc.Japan 54,4479−4482
H.Kawamura & M.Tanemura(1986)“Reentrance Phenomema in the Two−Dimensional XY Spin Glass”(Submited to J.Phys.Soc.Japan.)


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

具体的な実施計画は以下の通り
1.種村がすでにもっているランダム構造の種々のパターンにイジングスピンを付与して,いくつかの温度においてモンテカルロシミュレーションをする。
2.規則構造上においてボンドのつよさをランダムにしてXYスピンを付与していくつかの温度においてシミュレーションをおこなう。
3.粒子の大きさを増大するシミュレーションのランを長くする等の必要性のためにモンテカルロ法の効率化を検討する。
4.新しい手法によって上記の実験を他のパラメータ値においておこない結果を検討する。中間結果を各種・研究会にて発表する。
5.結果をまとめ,印刷公表する。
種村は以前からランダムな構造から相転移をつくり問題に興味をもっており,川村はかねてよりスピン系の問題を手がけてきた。本研究はこの両者の成り立ちから生まれた。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川村 光

大阪大学