平成202008)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

20−共研−4404

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

GPSデータロガーを用いた海鳥の飛翔・採餌行動の空間スケールと行動モデリング

重点テーマ

フィールド生態学と統計数理

フリガナ

代表者氏名

ヨダ ケン

依田 憲

ローマ字

Ken Yoda

所属機関

名古屋大学

所属部局

環境学研究科都市環境学専攻

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

130千円

研究参加者数

3 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

   海洋の高次捕食動物の行動は、海洋の生物生産力と相互作用しながら、極めて動的に様々な時間・空間スケールで変化する。したがって、海洋環境の変化に対する捕食動物の行動的対応や意志決定を理解するためには、ミクロからマクロレベルでの行動記録およびデータ解析が必要である。20年ほど前から、動物装着型のトラッキングシステムの利用により、動物の移動位置の記録が可能になってきた。特に、VHF発信器やアルゴス衛星システムを用いた動物の行動追跡はよく使用されている。しかしながら、これらの機器は高速サンプリングで動物を定位することができない上に、測定誤差も大きいことが欠点となっており、多様な時間・空間スケールの解析には向かない。近年、これらの機器に代わるトラッキングシステムとして期待されているのが、GPSデータロガーである。GPSデータロガーは、GPSシステムを使用することによって、ほとんど測定誤差無く、数秒に一回の高速サンプリングで動物の位置をロギングすることができる。本研究では、GPSデータロガーを用いることによって、繁殖期の海鳥または幼鳥の索餌・採餌行動を記録し、様々な時間・空間スケールで意志決定の解析を行った。
   本年度は5-12月にかけて、沖縄県仲ノ神島および西表島において、海鳥カツオドリの幼鳥にGPSデータロガーを装着し、行動圏の発達について調査した。幼鳥は次第に行動圏を拡大し、効率的な飛翔・休息方法を獲得していくことが明らかとなった。また、8-10月にかけて、岩手県三貫島と新潟県粟島において、オオミズナギドリの成鳥の生態調査を行った。三貫島で繁殖するオオミズナギドリは、島から20-500km離れた場所で採餌を行っていた。オオミズナギドリの移動データと衛星から得られた環境データを組み合わせることによって、採餌トリップのパターンが風やクロロフィルa濃度などに影響を受けていることが明らかとなった。また、新潟県粟島の個体は主に島の周囲で採餌を行っていたが、一部のオスは津軽海峡を抜けて北海道釧路沖まで飛翔し、採餌を行っていた。太平洋と日本海で繁殖するオオミズナギドリにとって、釧路沖は生物学的ホットスポットとなっていることが考えられる。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

・論文発表(2点)
1. K. Yoda and H. Kohno. Plunging behavior in the chick-rearing brown booby. Ornithological Science 7, 5-13 (2008)
2. T. Yamamoto, A. Takahashi, K. Yoda, N. Katsumata, S. Watanabe, K. Sato, P. N. Trathan. The lunar cycle affects at-sea behaviour in a pelagic seabird. Animal Behaviour 76, 1647-1652 (2008)

・ 国内学会発表
3. 新潟県粟島におけるオオミズナギドリの飛翔行動に関する研究. 山口まどか,綿貫豊,山本麻希,依田憲. 第56回日本生態学会. 2009年3月17-21日, 盛岡.
4. GPSを用いたオオミズナギドリの行動追跡. 依田憲. 第56回日本生態学会. 2009年3月17-21日, 盛岡.

・ 国際学会発表
5. Fine-scale movement of seabirds: application of GPS loggers with sub-second sample to streaked shearwaters (Calonectris leucomelas). Yoda K, Sato K, Katsumata H, Miyazaki N, Takahashi A. 5th World Fisheries Congress. Oct 20-25, 2008, Yokohama.
6. DEVELOPMENT OF FLIGHT BEHAVIOR OF HAND-RAISED GREAT CORMORANTS USING GPS DATA LOGGERS. Tadashi Tajima, Sachiho Sasaki, Yukiko Inoue, Hidenori Fujii ,Yasuaki Niizuma, and Ken Yoda. 6th ANNUAL MEETING OF THE PACIFIC SEABIRD GROUP. 18 - 26 February, 2009, Hakodate

・ ホームページでの成果の公表
http://web.mac.com/yoda_ken/

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

動物の移動行動解析・2008/12/10・統計数理研究所・約10人

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

島谷 健一郎

統計数理研究所

渡辺 伸一

東京大学