平成242012)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

24−共研−1015

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

6

研究課題名

子どもの社会性に関する発達行動遺伝学的研究

フリガナ

代表者氏名

サカイ アツシ

酒井 厚

ローマ字

SAKAI ATSUSHI

所属機関

山梨大学

所属部局

教育人間科学部

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 本研究の目的は、発達精神病理学、発達心理学、行動遺伝学、教育社会学の統合的観点から、幼児期の子どもがいる家庭を対象とした4年間の縦断研究を実施し、家庭、教育機関(園・学校)、地域の相互関係性やそれぞれのあり方が、幼稚園期から小学校期への子どもの社会性の発達にどのように影響するのか、子どもの個人的特性(気質・遺伝・問題行動の萌芽的形態)との相互作用を含めて検討していくことである。
 平成24年度は約320家庭に質問紙調査を実施した。主な質問項目は、人口統計学的変数(出生順位、性別、家庭の社会経済的要因)、子どもの社会性変数(仲間の数、仲間と遊ぶ頻度、共感・協調性、能動・自己主張性、問題行動など)、子どものパーソナリティ変数(気質・性格)、環境変数(親の養育態度、親の抑うつ傾向、家族の凝集性、子どもの仲間関係、保育所・幼稚園を含む近隣地域の子ども関連施設の利用実態など)に関する内容であった。また、承諾を得た約20家庭には観察調査も実施した。
 今回は、幼児期における母親の精神的健康度と子どもの問題行動との関連について検討した。主な結果として、母親の育児ストレスの高さが養育態度の温かさの低下に関わり子どもの問題行動につながるパスが見られた。また、母親の育児に対するサポート源の種類が多いほど、こうした養育態度の悪化を防ぐ可能性が示唆された。育児へのサポート源としては、親族や友人ばかりでなく地域の子育てサークルや医師等の専門家も重要であり、母親自身のパーソナリティが外向的であるほど、地域サービスや専門家にまで育児の相談相手を広げている現状が伺われた。
 観察調査では、親の養育態度と子どもの課題に対する達成動機との関連について検討した。その結果、親の統制的な関わりの高さは、子どもが課題に取組む際の否定的な言動の多さと有意に関わる一方で、親の穏やかな指示傾向の高さは、子ども自身の課題に対する肯定的な言動の多さと有意に関わることが示された。
 平成25年度は、社会性の諸側面と子どもを取り巻く環境および個人的特性に関する情報を引き続き収集し、社会性の発達を向社会的と反社会的の両者を含めた複数のパターンとして描き出し、これらのパターンの違いを生む背景要因について検討したいと考えている。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

酒井厚・眞榮城和美・則定百合子・上長然・梅崎高行・田仲由佳・高橋英児 2012 子ども期の社会性の発達に関する縦断研究プロジェクト(1)養育者の子育てサポートネットワークと養育態度および幼児の問題行動との関連, 日本教育心理学会第54回総会,2012年11月, 琉球大学

前川浩子・眞榮城和美・則定百合子・松本聡子・上長然・梅崎高行・田仲由佳・酒井厚 2012 子ども期の社会性の発達に関する縦断研究プロジェクト(2)親によるきょうだいの育て方と子どもの対人関係能力との関連,日本教育心理学会第54回総会,2012年11月,琉球大学

眞榮城和美・前川浩子・則定百合子・酒井彩子・上長然・梅崎高行・田仲由佳・酒井厚 2012 子ども期の社会性の発達に関する縦断研究プロジェクト(3)親子相互作用にみる子どもの自己有能感・社会的受容感の発達 日本教育心理学会第54回総会,2012年11月,琉球大学


眞榮城和美・酒井厚・前川浩子・松本聡子・則定百合子・上長然・酒井彩子・田仲由佳・梅崎高行・高橋英児 2013 子ども期の自己有能感・社会的受容感の発達-双生児家庭を対象とした親子相互作用分析から-, 日本双生児研究学会第27回学術講演会, 2013年1月,慶應義塾大学


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

開催していません。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

尾崎 幸謙

統計数理研究所