平成242012)年度 共同研究集会実施報告書

 

課題番号

24−共研−5006

分野分類

統計数理研究所内分野分類

f

主要研究分野分類

2

研究課題名

データ解析環境Rの整備と利用

フリガナ

代表者氏名

ナカタニ トモアキ

中谷 朋昭

ローマ字

Nakatani Tomoaki

所属機関

北海道大学

所属部局

大学院農学研究院

職  名

助教

配分経費

研究費

40千円

旅 費

575千円

研究参加者数

15 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 データ解析環境Rは統計計算とグラフィックスのための言語・環境である。Rは多様な統計手法(線形・非線形モデル、古典的統計検定、時系列解析、判別分析、クラスタリング、その他)とグラフィックスを提供するオープンソースなソフトウエアとして、広汎な拡張が可能である。近年では、医学、薬学、疫学、統計学、経済学、言語学、地理学、心理学など多分野にわたって、世界中で利用されるようになってきており、Rは何らかのデータを扱う人々の世界的な共通言語であるといえる。
 日本においても、フリーでオープンソースであること、頻繁なバージョンアップやアドオンパッケージによって最新の統計手法がいち早く実装されること、オペレーティングシステムに依存しないマルチプラットフォームであること、日本語環境で利用できること、などの理由によって急速に普及が進んでいる。ここ数年間で、Rに関連した日本語の学術書・技術解説書の出版は30点以上に及ぶことからも、日本におけるRの普及状況をうかがい知ることができる。
 以上のように、Rによるデータ解析・統計学の利用の裾野が広がっている現在、多くのユーザが集い、意見交換や情報を共有する物理的な機会を継続的に提供することは重要である。
 本研究の参加メンバーは、いずれも日本を代表するRユーザであり、Rを利用した教育活動、研究活動、業務活動に多くの実績を残している。本研究は、これらの成果や実践活動における工夫を多くのRユーザに広く開示し、それに関する議論をおこなう物理的な場を提供することを目的とした。
 本年度は、2012年11月29日から3日間にわたって開催され、海外からのスピーカー1名によるチュートリアル講演および国内ユーザ10名による実践的な成果の報告が行われた。また、最終日の12月1日には、研究集会と並行して、全国の地域Rコミュニティの全国集会Japan.Rも開催され、統計解析の初心者を対象としたチュートリアルや、企業における活用事例などの報告が行われた。
 本年度は、昨年度の試行で好評を博した研究集会のインターネット中継を本格的に実施するために、ニコニコ動画の統数研チャンネルを利用して、日本人セッションの中継を行った。
 研究集会への参加者は、海外からのゲストスピーカーによるチュートリアルが2日間でのべ60人、国内ユーザによる報告は、1日で61人、Japan.Rは午前の部と午後の部でのべ約70人であった。また、ニコニコ動画の中継は時間帯別の3部構成であったが、それぞれ、リアルタイムで296人、174人、177人、後からの視聴予約数が97人、55人、52人であった。
 これまで継続的に研究集会を開催してきたが、研究集会への参加人数は毎年着実に増加しており、ネット中継も含めれば、Rや統計解析に興味を持つ幅広いユーザの支持を得ているといえる。したがって、本研究集会は、Rに関する先端的な活用事例を周知する場としての役割だけでなく、異分野のRユーザや、統計解析に興味を持ち始めた初心者などが新たに交流を始める物理的な場として重要な役割を果たしており、その目的を十分に達成していると考える。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

研究集会案内
<http://jasp.ism.ac.jp/~nakanoj/workshop12/2012Rmeeting.htm>

R関連の日本語情報源であるRjpWiki<http://www.okada.jp.org/RWiki/>における研究集会開催告知
<http://www.okada.jp.org/RWiki/?R%B7%C7%BC%A8%C8%C4#p12b1d0a>

ニコニコ動画 統数研チャンネル
<http://ch.nicovideo.jp/channel/tousuuken>

研究集会報告資料
<http://prcs.ism.ac.jp/useRjp/>

研究集会のプログラムは、下記の通りである。
Program:
◯11月29、30日: 海外ゲスト講師によるチュートリアル講演 (英語)
場所:3階 セミナー室2

Speaker: Professor John Fox (Department of Sociology, McMaster University, Canada)

29 November (Thu.)
10:30-12:00 : Structural Equation Modeling in R with the sem Package (1)

12:00-13:30 Lunch

13:30-15:00 : Structural Equation Modeling in R with the sem Package (2)
15:15-16:45 : Structural Equation Modeling in R with the sem Package (3)

30 November (Fri.)
10:00-11:00 : Visualizing Regression Models in R with the effects Package (1)
11:10-12:10 : Visualizing Regression Models in R with the effects Package (2)

12:10-13:30 Lunch

13:30-14:30 : Writing R Commander Plug-in Packages (1)
14:40-15:40 : Writing R Commander Plug-in Packages (2)
15:40-16:00 : Questions & Discussion

◯12月1日(土) 国内ユーザによる報告
場所:2階 大会議室

9:50-10:00 開会挨拶および諸連絡
10:00-10:30 奥村 晴彦(三重大学)
Rによる大震災データ解析
10:30-11:00 牧山 文彦(名桜大学共同研究員)
plotKMLとGoogleEarth
11:00-11:30 樋口 千洋(大日本住友製薬)
オミックス研究とR
11:30-11:35 Japan.Rからのお知らせ
11:35-13:00 昼食
13:00-13:30 鈴木 了太(株式会社 ef-prime)
データ解析のためのGUIフロントエンド
13:30-14:00 石倉 究(北海道大学大学院)
新しいBayesデータ解析プログラムRStanの使い方
14:00-14:30 岡田 昌史(筑波大学)
MPIクラスタとRstudioを併用した中規模データの分析レポート作成の実際
14:30-15:00 谷村 晋(兵庫医科大学)
Rによるマルチエージェントシミュレーション
15:00-15:30 休憩
15:30-16:00 奥村泰之(国立精神・神経医療研究センター)
臨床疫学におけるRの普及活動
16:00-16:30 中澤 港(神戸大学)
人口予測の可視化
16:30-17:00 藤野 友和(福岡女子大学)
Rによる人口動態・健康指標分析システムの構築
17:00-17:30 討論

○12月1日(土) Japan.R
場所:3階 セミナー室2
10:00 - 12:30 はじめての「R」
12:30 - 14:00 休憩
14:00 - 14:30 CodeIQ のコラボレーション企画
14:30 - 15:00 Rでソーシャルネットワーク分析
15:00 - 15:15 休憩
15:15 - 16:15 パネルディスカッション「実ビジネスにおけるRとの上手な付き合い方」
16:15 - 16:30 休憩
16:30 - 17:30 Lightning Talk 大会

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

アール コアチームメンバー ニ

The R Foundation for Statistical Computing

合崎 英男

農村工学研究所

石倉 究

北海道大学

岡田 昌史

筑波大学

奥村 晴彦

三重大学

奥村 泰之

独立行政法人国立精神・神経医療研究センター

姜 興起

帯広畜産大学

鈴木 了太

株式会社ef-prime

谷村 晋

兵庫医科大学

中澤 港

神戸大学

中野 純司

統計数理研究所

フォックス ジョン

McMaster University

藤野 友和

福岡女子大学

牧山 文彦

名桜大学