平成302018)年度 重点型研究実施報告書

 

課題番号

30−共研−4218

分野分類

統計数理研究所内分野分類

j

主要研究分野分類

6

研究課題名

大学ベンチマークの理論に関する基礎的研究

重点テーマ

IRのための学術文献データ分析と統計的モデル研究の深化

フリガナ

代表者氏名

シロイシ テツヤ

白石 哲也

ローマ字

Shiroishi Tetsuya

所属機関

山形大学

所属部局

学術研究院

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

353千円

研究参加者数

8 人

 

研究目的と成果(経過)の概要

研究目的

本研究の目的は、IR(Institutional Research)活動の一つであるベンチマークについて、「日本の大学がベンチマークを行う際の理論的基盤となる知見を整理すること」である。

研究成果

1) ベンチマークの理論面に関する文献調査
米国では、主に教育面を中心にベンチマークが実施されており、そこで使われるデータは、IPEDSやNCESのものである。また全米レベルでの学生調査による比較やAAUDEのように加盟校間で詳細なデータ交換を行い、ベンチマークを実施する大学もある。
英国では、ほとんどの大学が国立大学ということもあり、大学の学生、職員、財政データは、HESAに集約され、HEIDIというシステムでレポート生成とベンチマークが簡単に行われる仕組みになっている。それ以外のデータ(研究、施設、図書館等)についてはそれぞれの専門職団体によってデータが集約され、ベンチマークが行われている。
このように、米国、英国では大学データを集約する全国レベルの機関がデータを集約し活用できるプラットフォームを提供することで、大学間のベンチマークがしやすい環境が整備されている。


2) ベンチマークを実践している日本のIR実務者へのインタビュー調査
宮崎大学の田中准教授から、科研費データベースを用いた研究者ネットワークについてご報告を頂いた。


3) IR・統計科学の両分野への情報提供と分野横断的な検討(コミュニティの形成)
主に、研究IRを実施している研究者の参画により、教学IRがカバーできない領域(研究力評価等)についての共同研究を実施した。第1回及び第2回研究会ともに、それぞれの分野の実践研究を報告することで、課題点の抽出などを行った。


4) 理論的基盤の整理への還元
現時点における整理状況は以下の通りである。

・ベンチマーキング活動に必要なデータの蓄積と活用に当たり、個々の大学の取組では限界があり、大学間あるいは全国レベルのデータ収集システムを構築する必要性が明確になった。特にNSF,IPEDSとAIRの関係や、HESAとARMAとの関係に見られるように、データ活用の知見の集積や、データ活用のプラットフォーム構築が必要であり、これに類似した中間組織の設置が強く求められる。

・研究力指標の位置づけの考察から、以下のことが分かった。
 分野毎の論文の出易さを考慮することが望ましい。
 Conference PaperはArticleよりも発表が比較的容易であり、重みを付けることが必
 要である。また、整数カウントよりも分数カウントを用いた方が良い。複数大学のデ
 ータを用いることで、評価結果への信頼性が高まる。

・科研費データからみる研究者ネットワーク分析事例からは、研究者の関係性の可視化
は学内の研究戦略を立てる際に有効な知見を与えると共に、中心性の指標はさらなる 調査と工夫が必要だが何らかのベンチマーク使える可能性が考えられた。

・大学の研究力分析(大学間比較)に必要なデータ数分析事例からは、大学の規模を考慮したインプット指標やアウトプット指標による比較を行うためには、「どの程度の分解能を要求する分析を行うかにより、何年間のデータを準備すればよいのか」という目安を得ることができた。

・教育力の分析からは、「数値の背景にあるプロセス」の重要性が実践事例から確認できた。また、共通設問を用いることでデータ定義の不統一の問題を避けることができた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【研究会実施の詳細】

12月実施分
http://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php?page=bm2018a

1月実施分
http://iir.ibaraki.ac.jp/jcache/index.php?page=bm2018b


【成果報告】
1)田中秀典,科研費データを元にしたネットワーク解析による研究者の可視化,継続的改善のためのIR/IEセミナー (九州工業大学) ,2019年3月

2)白石哲也・大野賢一・嶌田敏行・小湊卓夫・山本鉱・橋本智也・田中秀典,大学ベンチマークの理論に関する基礎的研究,統計数理研究所,2019年3月

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

【第1回研究会】
テーマ:IR実務担当者による合同研究会 〜教学IRと研究IRの必要性〜
日時:2018年12月21日(金)
場所:統計数理研究所
参加者数:5名

【第2回研究会】
テーマ:ベンチマーク研究会
日時:2019年1月16日(水)
場所:山形大学東京サテライト
参加者数:6名

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大野 賢一

鳥取大学

小湊 卓夫

九州大学

嶌田 敏行

茨城大学

田中 秀典

宮崎大学

橋本 智也

四天王寺大学

山本 鉱

九州工業大学