平成101998)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

10−共研−67

専門分類

7

研究課題名

人体の各領域における皮膚表面凹凸の法則性の検討

フリガナ

代表者氏名

イマヤマ シュウヘイ

今山 修平

ローマ字

所属機関

九州大学

所属部局

医学部

職  名

講師

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

人体を覆う皮膚の表面には細かい凹凸があり、皮野と皮溝と呼ばれている。皮膚は(たとえば手足には毛がないなど)部位に応じて多彩な変化を遂げているが、この凹凸にも(手足には指紋・足紋があるなど)部位による違いが見られる。しかし、その形勢機序と生物学的意義は今なお不明である。そこで皮膚表面の凹凸の形成過程を、成長を追って部位ごとに実測し、予想される法則との尤度を検定する。


ヒト皮膚の表面には細かい溝がある。出生時から存在し、割合に規則正しいために注意して見ないと存在に気づかない溝を「皮溝」と呼び、幼小児期には存在せず、老化と共に次第に増加するものを「皺」と呼ぶ。後者は「弛み」というもう一方の老化現象と共に現れ、不規則であるために否応なく存在に気づかされるが、両者とも皮膚表面の線状の陥凹である。
手指や肘の関節背面の深い「皮溝」も、関節伸長時には目立つが屈曲するにつれて浅くなり遂には消える。一般の細かい「皮溝」も伸長により消失することから「皮溝」が伸展時の表面積の備蓄であろうことが推測される。そこで、発育と共に増加する皮膚表面積との関係を検討するために、「皮溝」の変化を経時的に撮影して記録し、加えて表皮真皮接合部に「皮溝」が反映されるか否かを optical coherent tomography (OCT) により計測した。
その結果「皮溝」の方向と深さは皮膚に掛かる張力負荷と皮膚の柔軟性と深い関係があること、個々の「皮溝」はU字型の陥凹であり、その深さは乳頭層に限られることが判明した。他方「皺」はV字型の陥凹であり、深さは不規則で「皮溝」より深い層に達していた。現在「皺」の長さと方向を、皮膚の柔軟性との関係で検討中である。
以上の結果から「皮溝」が皮膚表面積の備蓄として機能していると考えられるのに対して、「皺」は(老化に伴い)緊張と柔軟性を失った皮膚が、骨格筋の運動による内部からの変形に追随できずに形成された「歪み」、すなわち皮膚表面積の余剰であろうと考えられるに至った。
〔研究会の場合 開催期間:2日間 開催場所:統計数理研究所  〕


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

今山修平、本多久夫、種村正美:皮膚形態形成の数理統計モデル、組織培養学会、1999年
5月21日(富山)

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

誕生直後からの皮膚表面の凹凸の観察と記録、その成長に伴う変化、および成人と老人の皮膚の計測と記録は九州大学医学部において今山修平らが実施する。そうして得られたデータは兵庫大学の本多久夫が解析し、皮膚表面の凹凸状態の実測値を得る。この構造の法則性の検討を統計数理研究所の種村正美が担当する。人体の各領域ごとに負荷される外力量と、頭・顔・頚・躯幹・四肢・手・足などの実測値との比較から法則を発見または予測する。本研究の結果、形態形成における皮膚の役割、言い換えれば、ヒトを含めた生命体の形の形成に果たしている外皮の生物学的意義が明らかになると思われる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所

本多 久夫

兵庫大学