平成232011)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

23−共研−2001

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

異なる時空間解像度を持つマルチモダリティ計測データによる階層神経モデルの構造推定

フリガナ

代表者氏名

オク ヨシタカ

越久 仁敬

ローマ字

OKU YOSHITAKA

所属機関

兵庫医科大学

所属部局

生理学生体機能部門

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

125千円

研究参加者数

6 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

光学的イメージング技術の進歩により、脳神経活動の多点同時記録が様々なモダリティによる計測法で行えるようになってきた。なかでも膜電位イメージング法での計測領域は0.2〜5.0平方ミリメートルの範囲内のマクロな神経集団の興奮伝播を高時間解像度(1msec程度)で計測可能である。我々は2005年から呼吸中枢の膜電位イメージングデータの時空間解析を行う研究チームを組織し、イノベーションアプローチによる神経賦活の検出法の開発など様々な成果を上げてきた。また、その過程で、脳神経の周期的同期発火現象の解明が脳を理解するためにまず行うべきことであるとの認識に至った。一方、膜電位イメージング法よりさらに高空間解像度のカルシウムイメージング法では0.01〜0.5平方ミリメートルの計測領域内の500個を超える細胞の活動のミクロレベルでの計測が可能であり、神経細胞とグリア細胞(アストロサイト)各々の活動や相互作用の生理的メカニズムについて研究が進められている。このように各々の階層での研究は進捗しているが、現状として、以下の項目が問題点として挙げられる。すなわち、マクロレベル、ミクロレベルで計測されるデータの時間/空間解像度が異なるため、各々の階層から得られる神経活動の時空間情報を数理的に統合する方法論が開発されていない。また、実データを用いたミクロレベルの数理モデルのパラメーター推定やモデル定量的評価のための有効的なアルゴリズムが開発されていない。そこで本研究では、周期的同期発火現象におけるマクロレベルの膜電位イメージングデータとミクロレベルのカルシウムイメージングデータからの情報を統合的に記述する階層神経モデルの構築を行うことを目的とする。
今年度は、カルシウムイメージングデータの解析方法確立のためのパイロットスタディを行った。その結果、パワースペクトルイメージから、呼吸周波数とそれより速い周波数で活動する2群の細胞集団が存在することがわかり、今後、短時間フーリエスペクトルイメージングやウェーブレットイメージングによって、それらの細胞群活動の時系列変化を見ていくのが有望との結論を得た。未だ、ニューロンとグリア細胞をどのようにして弁別するかという問題は残っているが、次年度にグリア細胞を赤色蛍光で標識した上で、緑色蛍光で細胞の活動を観測する方法を検討する予定である。
また、昨年度からの継続研究課題として、動物サンプル毎に解剖学的形状が異なるイメージ画像データを統一的に統計処理するための標準脳作成を目的として、ラット頚髄組織標本を用いてr-thetaグラフ、アフィン変換、その組み合わせ、による標本の標準化法の比較検討を行い、学会発表した。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文発表

1. Lal A, Oku Y, Hulsmann S, Okada Y, Miwakeichi F, Kawai S, Tamura Y, Ishiguro M. Dual oscillator models of the respiratory neuronal network generating quantal slowing of respiratory rhythm. J Comp Neurosci 2011;30:225-402.

2. Miwakeichi F, Oku Y, Okada Y, Kawai S, Tamura Y, Ishiguro M. Detection and visualization method of dynamic state transition for biological spatio-temporal imaging data. IEEE Trans Med Imaging 2011;30:859-663.

3. 越久仁敬. 蛍光イメージングを用いた呼吸中枢網の解析. 呼吸と循環 2011;59:1199-205

学会発表

1. Miwakeichi F, Oku Y, Okada Y, Kawai S, Tamura Y, Ishiguro M. A spatio-temporal analysis for detecting neural activation in the imaging data. 58th World Statistics Congress of the International Statistical Institute 2011.8 Dublin

2. Fujiki Y, Okada Y, Oku Y, Yokota S, Tamura Y, Ishiguro M, Miwakeichi F. A comparison of standardization methods of voltage-imaging data that enable to integrate the spatial information from different samples. 第34回日本神経科学大会 2011.9 横浜

3. 藤木康久, 横田茂文, 岡田泰昌, 越久仁敬, 田村義保, 石黒真木夫, 三分一史和. 脊髄イメージングデータにおける標準化手法とその評価. 医用診断のための応用統計数理の新展開III 2011.9 立川

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

[1] 共同研究カンファレンス「カルシウムイメージング実験の現状と今後の戦略」平成23年6月3日、統計数理研究所サテライトオフィス、8名参加

[2] 共同研究カンファレンス「脊髄膜電位イメージング画像の標準化と麻酔効果の解析」平成23年7月27日、統計数理研究所サテライトオフィス、8名参加

[3] 共同研究カンファレンス「平成24年度文部科学省科学研究費応募戦略について」平成23年10月5日、統計数理研究所サテライトオフィス、7名参加

[4] 共同研究カンファレンス「カルシウムイメージングデータ解析(第2回)」平成23年12月16日、統計数理研究所サテライトオフィス、6名参加

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

岡田 泰昌

独立行政法人国立病院機構村山医療センター

田村 義保

統計数理研究所

三分一 史和

統計数理研究所

ラル アミット

Peking University