平成122000)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

12−共研−2047

専門分類

8

研究課題名

教師の精神的健康を測定する質問紙の開発(2)

フリガナ

代表者氏名

カワハラ セイジ

川原 誠司

ローマ字

Kawahara, Seiji

所属機関

宇都宮大学

所属部局

教育学部

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

教師の精神的健康を測定する質問紙の開発(2)
川原 誠司(宇都宮大学)
土屋 隆裕(統計数理研究所)
川原 美香子(三輪田学園)
【1.問題と目的】
 学校という場での教師の職務は多忙であるとは言われてきたが、近年、教育カリキュラ
ムの改変や「いじめ」や「不登校」への対処など多岐にわたる問題への対処のために、そ
の仕事はますます激務になってきたと思われる。そのために、多大な疲労感を抱えたり、
体調を崩したりする教師も少なくない。文部省の調査によると、1997年度に病気休職し
た教師の人数は4171名、そのうち精神性の疾患で休職したものは1609名(休職者全体の
38.6%)となっており、精神性疾患で休職する教師の割合は微増傾向になっている。教師
の職務が身体的な健康のみならず、精神的なストレスのかかるものであることが分かる。
 このような、教師のストレスに対しては、教師個人の手記であるとか(関根,1992;横
尾1995;矢萩1998)、バーンアウトに関する調査も行われているが(宗像ら,1988)。幅
広い教師を調査対象にし、系統だった無作為抽出方法によって調査対象者を選定した上で
の研究結果は少なく、わずかに大阪府の教員3000名を対象(2172名の回収)にした調査
(大阪教育文化センター教師の多忙化調査研究会,1996)がある程度に留まっている。偏
りの無い多くの教師を対象に調査し、精神的健康の実態を把握することは、教師個別の精
神的健康の状況を知る上でも貴重な資料となろう。
 しかし、これまでの調査の質問内容では次のようなことが不明瞭であった。まずは、教
師自身が周囲からどの程度支えられているかということである。ストレスが生じた際に、
周囲からの支えがあることで緩和できることを示したソーシャル・サポートの研究は盛ん
であるが(浦,1992)、それを教員の関係に対し詳細に測定したことはなかった。しかし、
教員集団間のサポートは必ずしも円滑に行われているものではなく、中には「いがみあい」
や「いじめ」という実態も示唆されている(秦,1989;秦,1990)。客観的な多忙、それ
によって生じるストレスの多寡を把握することも重要ではあるが、そのストレスが生じた
ときに緩和できる対人関係が教員の日常に存在しているかを知ることも重要である。その
ような対人関係の詳細な調査結果は、学校現場の中の改善、教員文化の再構築、ストレス
を悪化させた教師への個別的・心理的働きかけなどに対して重要な情報となる。
 また、教師個人の持つ行動や認知の傾向がどのようになっているかも不明瞭であった。
確かにストレスによる精神性疾患を考えるときに、多忙を生み出す教育システムを考慮せ
ずに教師個人の特質として過度に帰因させることは危険だが、やはり教師個人の持つ行動
や認知の特性が「かたさ」や「緊張」を生み、ストレスに対して脆弱になってしまうこと
は考えられる。特性の把握を「このような特性を持っている教師であるからよくない」と
いう形式で行うのではなく、「このような特性が強い場合には、このような状況でこのよ
うな問題を生じやすい」といった環境との相互作用から考察することは重要であり、その
ような個人的な特性のありようを適切に知ることで、悩みを抱えた教師個人に対して適切
な働きかけができ、改善を図ることができるだろう。
 以上のことを問題意識として、川原・川原・土屋(2000)では栃木県の教師を対象に無
作為抽出による質問紙調査を行い、その実態を捉えようとした。昨年度に続き、本年度は
対象を全国規模に広げて同様の質問を行い、昨年度との比較を行い、最終的には項目や尺
度の標準化を行うことを目的とする。
【2.方法】
2.1 調査対象者と有効回答数
 全国の公立学校(小・中・高等学校)600校、教師3000名を目標に、対象者を選定し
た。『全国学校要覧2001年度版』を基に、600の基準抽出数を各都道府県の小・中・高校
の数に比例するように割り当てた。割当数については小数第1位を四捨五入したが、ただ
し、高校で0.5未満の数値になった都道府県においても、1校を抽出する作業を行った。
その数値を基に各都道府県の小・中・高校から学校を無作為に選定し、その学校の生徒数
から便宜的に大規模・中規模・小規模に分け(この基準は、川原・川原・土屋(2000)が
栃木県の教師を対象に行ったものを採用した)、大規模校なら7名分、中規模校なら5名
分、小規模校なら3名分の調査票を各学校に配布した。結果として、609校の教師(3067
名分)を抽出した。
 なお、職場や自分自身に関する個人的な気持ちや態度を質問する項目もあり、回答の守
秘性を尊重する必要があったため、返送については学校単位ではなく、各教師が返送でき
る形式を採った。
2.2 質問紙の構成
a)サポート
 サポートの種類については、山崎・川原(1995)が教師に対して行った同僚からのサポ
ートについてのインタビューでの分類を基に、

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【5.引用・参考文献】
〈引用文献〉
原田和幸・中塚善次郎 1990 教育現場における教師のストレス(?)日本教育心理学
会第32回総会発表論文集,482。
秦 政春 1989 学校社会の規範状況に関する調査研究(?)?教師集団の人間関係を
中心に? 福岡教育大学紀要,38,第4分冊,69-108。
秦 政春 1990 学校社会の規範状況に関する調査研究(?)?教師集団の人間関係に
よるインパクトを中心に? 福岡教育大学紀要,39,第4分冊,87-134。
川原誠司・川原美香子・土屋隆裕 2000 教師の精神的健康に関する意識調査報告書?栃
木県内の教師を対象にして? 平成11年度文部省統計数理研究所共同研究報告書
宗像恒次ら 1988 燃えつき症候群 金剛出版
大石勝男・関根正明・飯田稔(編)1994a 子どもとの人間関係 国土社
大石勝男・関根正明・飯田稔(編)1994b 職員室での人間関係 国土社
大石勝男・関根正明・飯田稔(編)1994c 保護者との人間関係 国土社
大阪教育文化センター教師の多忙化調査研究会(編)1996 教師の多忙化とバーン
アウト 法政出版
関根正明(編)1992 教師を辞めたいときに 学陽書房
田尾雅夫・久保真人 1996 バーンアウトの理論と実際 誠信書房
東京大学医学部心療内科 1995 新版エゴグラム・パターン 金子書房
浦 光博 1992 支え合う人と人 サイエンス社
矢萩正芳 1998 教師が心を病むとき 高文研
山崎美香子・川原誠司 1995 同僚教師に対する教師の認知構造 東京大学大学院教育学
研究科紀要,35,213-237。
横尾浩一(編)1995 教師が飛躍するとき 学陽書房
横山好治 1998 教師のストレス解消法 学陽書房
〈参考文献〉
渕上克義 1992 学校組織の人間関係 ナカニシヤ出版
渕上克義 1995 学校が変わる心理学 ナカニシヤ出版
松村茂治・小林正幸(編)1998 教師のための電話相談 教育出版
宮本幸雄 1998 教師たちの悩み 同朋社
武藤清栄(編)1994 現代のエスプリ:教師のメンタルヘルス 至文堂
武藤清栄(編)1999 教師へのメンタルサポートQ&A 日本文化科学社
杉尾宏(編)1988 教師の日常世界 北大路書房
高野良英 1999 実践職場のメンタルヘルス 岩崎学術出版社

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研究参加者一覧

氏名

所属機関

川原 美香子

三輪田学園

土屋 隆裕

統計数理研究所