平成202008)年度 共同利用登録実施報告書

 

課題番号

20−共研−19

分野分類

統計数理研究所内分野分類

i

主要研究分野分類

5

研究課題名

(1)不安定周期軌道による乱流統計量の予測 (2)乱流の直接数値シミュレーション

フリガナ

代表者氏名

カワハラ ゲンタ

河原 源太

ローマ字

Genta Kawahara

所属機関

大阪大学

所属部局

基礎工学研究科機能創成専攻

職  名

教授

 

 

研究目的と成果の概要

流体の乱流現象は,壁乱流に現れる対数速度分布や等方性乱流に見られるエネルギースペクトルの−5/3乗則をはじめ,美しい統計法則を有する.乱流運動の支配方程式であるNavier-Stokes 方程式は非線形性をもつため,速度平均や速度積平均といった乱流統計量に対して閉じた支配方程式を得ることはできず,乱流統計法則の予測問題は統計数理的にも物理的にもきわめて重要な研究課題である.共同利用登録申請者(河原)は,これまで乱流に見られる統計法則と乱流構造の時間発展の関係について,理論と数値シミュレーションの両面での研究を進めてきた.これらの研究の結果,最近,Navier-Stokes 方程式の不安定周期解によって,乱流の統計的性質やその構造の動力学がうまく再現できることが明らかとなった.この研究の過程で,不安定周期解によって,乱流統計法則を予測し,かつ統計法則発現の由来を乱流構造の動力学に基づいて理解できる,という本研究の着想を得た.
本研究の目的は,上で述べた研究を推進するためには,きわめて大きな自由度をもつ乱流運動に対して,直接数値シミュレーションを行い,さらには不安定周期解の計算とそれによる乱流統計解析を実行することである.まず,高Reynolds数乱流を再現する不安定周期運動を求める数値計算手法について検討し,GMRESとNewton法を組み合わせた数値計算プログラムを開発し,計算を実行した.また,計算領域を大きく取った,不安定温度成層下での水平平面間クエット乱流の直接数値シミュレーションを行い,浮力の影響により遷移域の乱流が活発化すること,さらに発達した乱流中に見られる大規模な乱流構造の秩序化が認められることが明らかとなった.