平成91997)年度 共同研究A実施報告書

 

課題番号

9−共研−49

専門分類

5

研究課題名

楕円粒子系の空間配置のモンテカルロ法

フリガナ

代表者氏名

タネムラ マサハル

種村 正美

ローマ字

所属機関

統計数理研究所

所属部局

調査実験解析研究系

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

3 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

現実に現れる空間パターンは形をもった対象の集団から成っている。そのような空間パターンの統計モデルをつくる際、対象が球対称性をもつことを前提にして記述されることが普通である。しかし、自然界に見られる対象の多くは球対称性をもたない異方粒子である。従来の記述が成立するのは密度の低い場合であり、密度が高くなって粒子同士が接触する状況では、粒子の固有の形が空間パターンに反映する。本研究では楕円粒子系の空間配置のモンテカルロ法を研究する。


自然界に見られる空間配置パターンは何らかの形をもつ対象の集団から成っている。そのような空間配置パターンの統計モデルの構築には、通常、その対象が大きさを持たない点や、大きさを持つモデルが必要な場合でも、それを球対称性を持つことを前提にすることが多い。
しかし、実際に観測されるのは球対称性を持たない異方性粒子であることがしばしばである。しかも、密度が高く、粒子同士が接触する場合には粒子の固有の形が空間配置パターンに影響する。本研究では、以上の観点から楕円粒子系の空間配置に絞ってモンテカルロ法による研究を行った。
申請書に記載した通り、約20年前に行われた Vieillard-Baron による計算機実験に比較して、われわれは今回、複数のアスペクト比および粒子数の大きな系の実験を行うことに成功した。楕円同士の接触の幾何学的条件は、非常に複雑な数式で表現されるが、今回、数式処理のプログラムの助けを借りて、メトロポリス法によるモンテカルロ計算のプログラムにそれを実装して、実験を行った。
その結果、互いに重なり合わない剛体楕円粒子系の状態方程式が複数のアスペクト比の系ごとに得られ、相転移の存在について一定の構造の変化が動径分布関数および方位動径分布関数に見られることから確認できた。
今回は、合同な楕円粒子のみから成る系に注目したが、今後は、異なる大きさや異なるアスペクト比の楕円が共存する粒子系などの複雑な系における計算機実験が必要である。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

種村 正美、「剛体粒子系の充填過程と空間構造」、形の科学会第40回
シンポジウム、1997年11月8日

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

代表者は、従来より球対称粒子の空間パターンの統計学を主として計算機シミュレーションを手段として研究を行ってきた。一方、共同研究者は計算物理学の分野で、球対称粒子集団に限らず、異方粒子の物理系にも興味をもって研究を進めてきた。「研究目的」を達成するために、このような両者が共同して研究を実施すれば、有用な成果が得られると期待できる。また、計算機シミュレーションの実行のために、統計数理研究所の強力な電子計算機環境の利用が不可欠である。本研究は今回、楕円粒子系に問題を絞って研究を行う。楕円系の計算機実験については、20年以上前に Vieillard-Baron が相転移現象の有無を検証するためにアスペクト比(半長軸/半短軸)=6の場合に限り、実験を行っている。しかし、その後の計算機の飛躍的な発達で、もっと広範囲のパラメータ領域での実験が待たれていた。この問題に関して、われわれは計算アルゴリズムをすでに開発しており、空間配置の問題としても楕円粒子系を扱うことが重要で、かつ実行可能である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上田 顯

京都大学

荻田 直史

(株)日本電算企画