平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2025

専門分類

6

研究課題名

GPSデータを用いた電離圏・プラズマ圏電子密度トモグラフィー(3)

フリガナ

代表者氏名

ウエノ ゲンタ

上野 玄太

ローマ字

Ueno Genta

所属機関

統計数理研究所

所属部局

モデリング研究系

職  名

助手

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

110千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

 GPS受信機の2周波電波の観測データから得られる視線方向の電子数積分値を用いて、高度100kmから20,000kmまでの電離圏・プラズマ圏の電子密度3次元分布の推定を行う事を目的としている。
 衛星を用いた測位システムであるGPSは2周波の電波を使用しており、その2周波電波の地球電離大気による遅延時間の差を用いて、電波の伝搬経路上の電子密度の総数を測定する事が出来る。そのような経路上の電子密度の積分値をTEC(Total Electron Content)と呼ぶが、近年のGPS受信機網の急速な発展により、大量のTECデータが得られている。特に日本には世界に類を見ない高密度のGPS受信機網(GEONET)が国土地理院によって展開され、そのデータからのTECの算出が京都大学によって進められている。これらのデータは積分値であるため、GPS軌道高度の20,000kmから地上までの経路上のどの領域がTECに寄与しているかを推定するにはトモグラフィーによる3次元電子密度分布の推定を行う必要がある。このような電子密度分布の推定によって、観測データが非常に限られている超高層域の物理現象の解明に寄与できる。
 平成18年度においては電離圏・プラズマ圏電子密度トモグラフィーについて、実際の観測データを用いた開発を行い、定常的な連続処理を開始した。また、連続処理の時に問題となる地磁気擾乱時や衛星配位が悪条件の時などの推定が困難な条件下での推定結果の評価を行った。アルゴリズムは平成16年度の共同利用研究に開発した拘束付き最小自乗法を用いたアルゴリズムである。悪条件下でも有効な解が求められる様に拘束条件を設定しているが、その条件の選択の基準としてABICを用いている。使用した観測データは国土地理院GPS受信機網GEONET、京都大学生存圏研究所MUレーダー、情報通信研究機構アイオノゾンデ網から得られる地上観測データである。それぞれのデータをトモグラフィー・アルゴリズムに取り込み3次元電子密度の推定を行い、その結果をトモグラフィーには用いなかった地上観測データと比較し、推定値の評価を行った。特に地磁気擾乱時の変動の3次元電子密度分布については、低緯度から伝搬する構造と高緯度から伝搬する構造のそれぞれにおいて磁力線方向に伸びた構造が見られるなど、従来の2次元の全電子数の測定からは見る事が出来なかった現象が明らかになった。現在、この推定結果の評価と物理機構の解明を進めている。
 平成19年度には、平成18年度には大きな進展が達成出来なかったアルゴリズムの高速化と、衛星観測データとの比較、東南アジア行きなど他の地域への応用を進める予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

地球惑星科学関連学会合同大会, 2006年5月14-18日, 千葉
GPS 観測データを用いた電離圏電子密度トモグラフィ
寺石周平,齊藤昭則,上野玄太,山本衛

地球電磁気・地球惑星圏学会第120回講演会, 2006年11月4-7日, 相模原
GPS電離圏電子密度トモグラフィによる日本上空電離圏擾乱の鉛直構造伝搬の研究
藤田 信幸, 寺石 周平, 齊藤 昭則, 上野 玄太

中間圏・熱圏・電離圏研究会, 2006年9月25-26日, 豊川
GPSトモグラフィを用いた電離圏擾乱鉛直構造の時間変化に関する研究
藤田信幸,寺石周平,齊藤昭則,上野玄太

第21回大気圏シンポジウム, 2007年2月27-28日, 相模原
GPSトモグラフィを用いた地磁気擾乱時電離圏構造の時間変化に関する研究
藤田 信幸、齊藤 昭則、上野 玄太

Saito, A., S. Fukao, and S. Miyazaki, High resolution mapping of TEC perturbations with the GSI GPS network over Japan, Geophys. Res. Let., 25, 3079-3082, 1998.

Saito, A., M. Nishimura, M. Yamamoto, S. Fukao, T. Tsugawa, Y. Otsuka, S. Miyazaki, and M. C. Kelley, Observations of traveling ionospheric disturbances and 3-m scale irregularities in the nighttime F-region ionosphere with the MU radar and a GPS network, Earth Planets and Space, 54, 45-56, 2002.

GPS全電子数データベース:http://stegps.kugi.kyoto-u.ac.jp

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

該当なし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

齊藤 昭則

京都大学

西岡 未知

京都大学

藤田 信幸

京都大学