昭和631988)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

63−共研−65

専門分類

7

研究課題名

食生活指標としての血清データの検討

フリガナ

代表者氏名

ワタナベ マサシ

渡辺 昌

ローマ字

所属機関

国立がんセンター

所属部局

疫学部

職  名

部長

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

食生活調査は癌発症のリスク解析のために屡々行われているが,必ずしも実際の食物摂取状況が把握できない難点があった。より直接的な指標としては血清データがあるが食物摂取との関連を総合的に調べられたことは少ない。本研究では,食生活指標としての血清データの有用性を検討し,食生活と癌発症,および予後との関連を調べることを目的とする。


がん発症の因子として食生活乃至ライフスタイルを総合的に把握する事は重要である。しかし,これらの調査は自記式アンケート方式によるものが殆んどで,調査結果が必ずしも実態を表していないという大きな問題があった。
本研究では大規模健康スクリーニング調査結果(ライフスタイル,血清データ)をもとに,両者の関係を検討した。
〔対象〕長野県厚生連佐久総合病院では毎年,長野県全域を巡回し,集団健康スクリーニングを実施している。内容は問診票(既往歴,家族歴,職業,自覚症状,食生活状況,飲酒,喫煙,運動),血液検査,眼底心電図,胸部X線,診察などである。検査結果は年度ごとに磁気テープに記録される。本研究では,昭和62年度の集団健康スクリーニング受診者(93403人)中,受診者数の多かった長野市,佐久市,松本市,南佐久郡,上水内郡,下伊那郡,中野市,飯山市,下高井郡,の40歳以上,32591人である。
〔方法〕食生活・ライフスタイルと,血液分析データとの関連を調べた。問診票の質問中,食生活・飲酒・喫煙に関連した項目(17項目)と血液分析結果(31項目)について,問診票項目に対する血液分析データの変動を調べた。さらに,項目間相互関連を加味し,全変量間の関係を多変量解析の手法により分析した。さらに,既往歴と家族歴との関連および両者と問診回答,血液分析データとの関連も検討を試みた。
〔結果・考察〕問診項目回答に対する臨床検査データの変動では,飲酒の習慣が「殆んどない」「週3日以上」の群が「週1〜2日」の群よりいわゆる「不健康」な値を示しており,同様の傾向は喫煙,食生活バランス等でも示された。これは,現在,一見「健康な」生活を送っている群には何らかの疾患,体調不調などを原因として,ライフスタイルを変えた群が含まれていることを示唆している。そこで,既往歴からみると,胃潰瘍,十二指腸潰瘍,肝・胆系疾患の既往の有無が,強く影響していると思われるグループが見出された。さらに,問診項目と臨床検査項目との関連を主成分分析およびクラスター分析を用い分析した。その結果,主成分分析では,第6主成分までで約38%の累積寄与率を示し,問診項目は第5成分以降大きな寄与を示すことがわかった。さらに,飲酒・喫煙と腎・肝機能,赤血球関連と鉄,食物バランス,血圧系因子,脂質代謝因子など数個のクラスタリングが得られた。今後は縦断的データをもとに,疾患発生と問診データ,臨床検査データとの関連を検討する予定である。充実したデータが生かせる機会となり,臨床職員の期待にも応えることができた。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

平成元年度 がん疫学研究会 発表予定
平成元年度 日本癌学会 発表予定


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

血清データと食物摂取の関連を調べるには,比較的長期にわたり食事内容が詳細に把握できることが望ましい。本研究では,この観点から入院患者を対象とする。さらに,間食をあまり摂らない疾患ということで「腎臓食」「心臓食」(病院により多少呼び名は異なる)の給食患者を中心に,{男女各20歳以上,1週間以上の入院,複数回の血清化学分析検査施行,関係する薬剤投与(−)}等基本条件を満たす症例を都内大学病院よりランダムサンプリングする。
本解析では,食生活の諸データ(成分比,カロリー等)と血清データ(電解質,脂質等)がそれぞれ時系列的に得られ,時系列間の関連も考慮し両者を対応づける必要がある。これらの統計的処理,多変量の集約指標化に,統計数理研究所との共同研究が必要である。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

大野 優子

(財)東京都神経科学総合研究所

駒澤 勉

統計数理研究所

津金 昌一郎

国立がんセンター研究所

馬場 康維

統計数理研究所