平成232011)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

23−共研−2028

分野分類

統計数理研究所内分野分類

d

主要研究分野分類

7

研究課題名

調査データベース公有化における個人データ保護と疑似個票データの作成

フリガナ

代表者氏名

サイ シドウ

佐井 至道

ローマ字

sai shido

所属機関

岡山商科大学

所属部局

経済学部 経済学科

職  名

教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

245千円

研究参加者数

13 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

本研究の目的は以下の(1)〜(5)であった。
(1)標本寸法指標を基に母集団寸法指標を推定する際に用いられる超母集団モデル(確率分割モデル)の性質を体系的にまとめ,さらに利用価値の高いモデルを構築する研究を行う
(2)多重寸法指標の推定について,精度の向上を目指し,応用範囲を拡張する研究も進める
(3)個票データの秘匿方法と秘匿後の有用性の総合的な研究を行う
(4)個票データから適切な統計量の組と集計表を作成し,それらに基づいて,公開しても安全な疑似個票データを作成する
(5)これまで蓄積された理論を,空間統計やPPDMなどの他分野へ応用する
このうち(1)については,渋谷,大和,星野らによって,ピットマンモデル,イーベンスモデルを中心に,今年度も着実に研究が進められた。
(2)については,佐井によって,層化無作為標本のリスク評価とともに,キー変数以外の変数によって事後層化された単純無作為標本に対するリスク評価に多重寸法指標が導入された。また渋谷によって,多重寸法指標に適用する多次元ピットマンモデルについても研究が進められた。
(3)に関しては,伊藤らによって,個票データの有用性の指標とリスクの指標を用いた分析についての提案がなされ,現在も検討が進められているところである。
(4)に関しては,小林,星野らによって理論面,応用面での研究が進められた。また,独立行政法人統計センターにおいて,伊藤の提案した方法を含む形で疑似個票データ(教育用擬似ミクロデータ)の試行提供が行われている。
(5)については,研究集会等においてPPDMなどに関する情報収集がなされた。また丸山によって,空間統計への応用を目的に,分析結果に影響を与えない秘匿措置についての提案がなされた。さらに,がん登録データの公開に関して,竹村,佐井,星野らによって,これまで蓄積された研究成果の提供と新たな問題に対する検討を行っているところである。
これらの研究成果については,2011年9月4日〜7日に九州大学で行われた統計関連学会連合大会などの学会やシンポジウムにおいて報告を行うとともに,研究集会などでも報告,討論を行った。特に,2011年10月21日,22日には,統計数理研究所において,科学研究費補助金グループ(基盤研究 (B)(研究代表者:佐井至道))との合同研究集会を開催し,本研究グループ以外の研究者や官庁統計の実務者との意見交換も行った。
このような研究活動の結果,官庁統計の公開に関する基礎理論が更に蓄積されたと考える。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

今年度,この研究に関連して新たに発表された論文(発表決定を含む)は次の通りである。

佐井至道, 層化無作為標本から得られる個票データに対するリスク評価, 岡山商大論叢, 第47巻, 第1号, 2011, 1-22.
稲葉由之, 事業所・企業を対象とした統計調査データに関する二次利用の課題, 2010年度統計技術研究会報告, 2011, 1-9.
Ito, S., The employment status and involvement in society of Japanese youth: Based on microdata from the 'survey on time use and leisure activities', Meikai Economic Review, Vol.23, No.2, 2011, 30-48.
伊藤伸介, わが国におけるミクロデータの新たな展開可能性について - イギリスにおける地域分析用ミクロデータを例に -, 明海大学『経済学論集』, Vol.23, No.3, 2011, 36-54.
小林良行, 匿名データの教育目的利用に関する一考察, 統計学, 第100号, 2011, 100-105.
小林良行, 公的統計ミクロデータ提供の現状と展望 - 一橋大学での取り組みをもとに, 日本統計学会誌 シリーズJ, 第41巻, 第2号, 2012, 401-420.
Takemura, A. and Hara, H., Markov chain Monte Carlo test of toric homogeneous Markov chains, Statistical Methodology, VOL.9, 2012, 392-406.
Hoshino, N., Random partitioning over a sparse contingency table, Annals of the Institute of Statistical Mathematics, Vol. 64, 2012, 457-474.
Yamato, H.,Residual fractions of size-biased permutations of discrete prior associated with Gibbs partitions, Bulletin of Informatics and Cybernetics, Vol.43, 2011, 41-52.
Maruyama, Y. and George, E. I., Fully Bayes Factors with a Generalized g-prior, Annals of Statistics, VOL.39, 2011, 2740-2765.
Miyawaki, K., Omori, Y. and Hibiki, A., Panel data analysis of Japanese residential water demand using a discrete/continuous choice approach, Japanese Economic Review, Vol.62, 2011, 365-386.
各務和彦, 和合肇, 大塚芳宏, 地域間所得分布と所得収束仮説, 日本統計学会誌 シリーズJ, 第41巻, 第1号, 2011, 181-200.

他24編

今年度,学会などにおける報告は次の通りである。

小川光紀, 原尚幸, 竹村彰通, 無向グラフに対するマルコフ基底の構造とその応用, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月5日, 九州大学(福岡県).
小林良行, 公的統計ミクロデータのオンサイト利用 - 一橋大学オンサイト利用施設の現状と課題, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月5日, 九州大学(福岡県).
佐井至道, 事後層化による個票データのリスク評価の改善, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月5日, 九州大学(福岡県).
伊藤伸介, 村田磨理子, 後藤武彦, ミクロデータにおける攪乱的手法の有効性の検証, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月6日, 九州大学(福岡県).
秋山裕美, 後藤武彦, 星野なおみ, 伊藤伸介, 山口幸三, 教育用ミクロデータの試行提供について, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月6日, 九州大学(福岡県).
石原庸博, 大森裕浩, 浅井学, レバレッジ効果のある行列指数確率的ボラティリティ変動モデル, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月6日, 九州大学(福岡県).
原尚幸, 青木敏, 竹村彰通, Running Markov chain without Markov basis, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月6日, 九州大学(福岡県).
稲葉由之, 荒木万寿夫, 世帯定義の拡張に関する考察, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月6日, 九州大学(福岡県).
渋谷政昭, 種の多様性調査におけるサブサンプリング, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月6日, 九州大学(福岡県).
大和元, 混合ディリクレ過程からの標本に基づく確率分割, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月7日, 九州大学(福岡県).
星野伸明, 自然数の確率分割における周辺分布, 2011年度統計関連学会連合大会, 2011年9月7日, 九州大学(福岡県).
伊藤伸介, ミクロデータにおける匿名化技法の適用可能性をめぐって, 経済統計学会第55回全国研究大会, 2011年9月14日, 中央大学(東京都).
秋山裕美, 後藤武彦, 山口幸三, 伊藤伸介, 教育用疑似ミクロデータの作成方法と試行提供について, 経済統計学会第55回全国研究大会, 2011年9月15日, 中央大学(東京都).
佐井至道, 個票データのリスク評価の改善について, 研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用」, 2011年10月21日, 統計数理研究所(東京都).
小林良行, プログラム送付型オーダーメード集計のためのテストデータ - メソデータの可能性, 研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用」, 2011年10月21日, 統計数理研究所(東京都).
星野伸明, エビデンスに基づいた匿名化, 研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用」, 2011年10月21日, 統計数理研究所(東京都).
山口幸三, 秋山裕美, 星野なおみ, 後藤武彦, 伊藤伸介, 教育用擬似ミクロデータの開発とその提供 - 平成16年全国消費実態調査を用いて -, 研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用」, 2011年10月21日, 統計数理研究所(東京都).
伊藤伸介, 村田磨理子, 後藤武彦, 家計調査ミクロデータを用いた攪乱的手法の有効性に関する研究, 研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用」, 2011年10月22日, 統計数理研究所(東京都).
稲葉由之,
試行的に作成された経済産業省匿名データの有用性に関する検証, 研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用」, 2011年10月22日, 統計数理研究所(東京都).
竹村彰通, 有限集合の部分集合族上の確率分布とマルコフ連鎖について, 研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用」, 2011年10月22日, 統計数理研究所(東京都).
大和元, 混合ディリクレ過程からの標本に基づく確率分割, 研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用」, 2011年10月22日, 統計数理研究所(東京都).
渋谷政昭, 数の分割からのランダムサンプリング, 研究集会「官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用」, 2011年10月22日, 統計数理研究所(東京都).
山口幸三, 秋山裕美, 星野なおみ, 後藤武彦, 伊藤伸介, 教育用擬似ミクロデータの開発とその提供 - 統計教育の教材として利用するために -, 第8回 統計教育の方法論ワークショップ, 2012年3月2日, 一橋大学(東京都).
伊藤伸介, 賃金センサスによる賃金の予測値を考慮した転職行動の分析, 研究集会「ミクロデータから見た家計の経済行動」, 2012年3月3日, 一橋大学(東京都).

他34件

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

2011年10月21日,22日の2日間,統計数理研究所において科学研究費補助金の研究グループ(代表者:佐井至道)と合同で研究集会を開催した。総務省統計局など官庁側の実務者を含め52名が参加し,本研究グループの8名を含め18名が報告を行った。また本研究グループ主催の研究会を今年度2回行っている。研究集会と研究会の詳細は次の通りである。

研究会テーマ:調査データベース公有化における個人データ保護の統計理論
日時: 2011年7月16日(土)10:00〜17:15
場所: 統計数理研究所・サテライトオフィス
参加者: 12名(うち報告者: 7名)

研究会テーマ:官庁統計データの公開における諸問題の研究と他分野への応用
日時: 2011年10月21日(金)10:00〜16:50,22日(土)10:00〜16:20
場所: 統計数理研究所・セミナー室5
参加者: 52名(うち報告者: 18名)

研究会テーマ:調査データベース公有化における個人データ保護の統計理論
日時: 2012年2月4日(土)10:00〜15:30
場所: 統計数理研究所・サテライトオフィス
参加者: 11名(うち報告者: 5名)

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

伊藤 伸介

明海大学

稲葉 由之

慶應義塾大学

大森 裕浩

東京大学

小林 良行

一橋大学

渋谷 政昭

慶応義塾大学

瀧 敦弘

広島大学

竹村 彰通

東京大学

田村 義保

統計数理研究所

星野 伸明

金沢大学

丸山 祐造

東京大学

大和 元

鹿児島大学

和合 肇

京都産業大学