平成152003)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

15−共研−1015

専門分類

7

研究課題名

比較ゲノム学による真核生物の系統進化の解明

フリガナ

代表者氏名

ハシモト テツオ

橋本 哲男

ローマ字

Hashimoto Tetsuo

所属機関

筑波大学

所属部局

生物科学系

職  名

教授

所在地

TEL

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研究目的と成果(経過)の概要

近年、遺伝子配列データの蓄積を背景として、真核生物全体の系統樹を推測する試みが盛んになされ、オピスト
コンタ(動物+真菌)、植物(緑色+紅色+灰色)、アメーボゾア、アルベオラータ+ストラメノパイル、ユーグレ
ノゾア+ヘテロロボサ、ディプロモナス、パラバサーラなど単系統群をなす真核生物の大グループの存在が明らか
となってきた。しかしながら、これら大グループ相互の系統関係は明らかではなく、真核生物の系統樹の根もとが
どこにあるかも不明である。個々の遺伝子の解析から得られている結論はまちまちであり、異なる遺伝子間での結
論が、統計的誤差の範囲を超えて明らかに矛盾する場合もある。本研究ではこうした状況を打破するため、可能な
限り多くの遺伝子のもつ情報を結合するというアプローチによりこの問題を克服することを目指している。比較ゲ
ノム学のアプローチにより可能な限り多くの情報を収集し、真核生物の大グループ間の系統関係と真核生物系統樹
の根もとを推定し、これまで単独の遺伝子に基づいて推定された結果よりも頑健な推定結果を得ることを目的とし
ている。
 これを達成するためには、一般的に蓄積データの少ないパラバサーラ、ディプロモナス、ストラメノパイルの各
分類群で、この問題の解明のために有用と考えられる遺伝子の遺伝子解析を行い、系統樹の解析上必須なデータを
得る必要がある。本年度は、これらの分類群に属する生物種について、リボソームRNA、リボソーム蛋白質、ペプ
チド鎖伸長因子などの遺伝子解析を行った。
 一方、さまざまな真核微生物の関連遺伝子のデータを検索し、最終的に24個の遺伝子を解析の対象とした。こ
れらについて、最尤法の枠組みのなかで、分子進化の過程に関するさまざまな置換モデルを適用し、Rate Across
Site(RAS)モデルを導入して系統樹の推測を行った。さらに、総合評価の解析により、個々の遺伝子から得られ
る情報を結合した。その際、解析結果に与える分子進化モデルの影響、組成値のバイアスの影響、アウトグループ
のとり方の影響、生物種のサンプリングの影響、進化速度の大きい座位を削除したときの影響、情報の結合に用い
る遺伝子の構成の影響などを可能な限り詳細に調査した。こうしたSensitivity analysisを徹底して行うことに
より、ディプロモナスとパラバサーラが姉妹群を形成する可能性の高いこと、真核生物の根もとがオピストコンタ
の共通祖先もしくはディプロモナスとパラバサーラの共通祖先のところにある可能性の高いことなどの新知見を
得た。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

Arisue,N.,Hashimoto,T.,and Yoshikawa,H.(2003)Sequence heterogeneity of the small subunit
ribosomal RNA genes among Blastocystis isolates.Parasitology 126:1-9
Arisue,N.,Maki,Y.,Yoshida,H.,Wada,A.,Sanchez,L.B.,Muller,M.,and Hashimoto,T.(2004)
Comparative analysis of the ribosomal components of the hydrogenosome-containing protist,
Trichomonas vaginalis.J.Mol.Evol.58:1-12

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

有末 伸子

大阪大学

稲垣 祐司

ダルハウジー大学

長谷川 政美

統計数理研究所

三井 英也

総合研究大学院大学

矢野 隆昭

昭和大学