平成202008)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

20−共研−2002

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

1

研究課題名

幾何確率および関連する統計的諸問題の研究

フリガナ

代表者氏名

イソカワ ユキナオ

磯川 幸直

ローマ字

ISOKAWA YUKINAO

所属機関

鹿児島大学

所属部局

教育学部数学科

職  名

教授

配分経費

研究費

50千円

旅 費

70千円

研究参加者数

2 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

パイナップルの鱗の配列等、多くの葉序のパターンには、フィボナッチ数列に関連する規則性が見い出すことができる。これらのパターンに、何故フィボナッチ数列が出現するか? この問題に対して、これまで幾種類かの説明が試みられてきた。しかし、それらの説明はなるほど興味深いものであるが、はなはだ直感的であり、厳密性に欠けるように思われる。
ところで、葉序のパターンに関しては、それを記述するいくつかの数学的モデルが、これまで研究されてきた。その中で最も単純なものが、ときおり円柱モデルと呼ばれているものである。このモデルは、円柱面に巻き付く螺旋を考え、その上に等間隔に並ぶ点列をとり、それらの点を母点とする円柱面のボロノイ分割を考える。円柱面を平面に展開することにより、n 番目の母点の位置は ( n α, n h ) であるとする。ただし、αは葉序のパターンを特徴づけるパラメータ(無理数)であり、また h は植物の成長を特徴づけるパラメターである。アラン・チューリングの示唆にしたがって、植物が成長することは、パラメータ h が減少することと考えることにする。
 共同研究では、円柱モデルにおいて、すべての母点を中心として、同じ半径の円を互いに重ならないように置くことにして、それらの円のうち最大の半径の円を問題にする。言い替えれば、円のパッキング密度の最大値 p を考える。もちろん p は α と h の関数である。このとき次の事を証明した。
「もし α が黄金比と同値な無理数であるならば、h がゼロに減少するとき、関数 p(h) はある定数 c > 0 に収束する。しかし、もし黄金比と同値でなければ、関数 p(h) の下極限は定数 c より小さくなる。」
この数学的な命題の植物学的な意味を、パイナップルの鱗を例として述べると:「パイナップルが成長するにつれて、その鱗のサイズが減少することはありえない。そこでαが黄金比と同値であるならば、隣接する鱗の間の最小距離(これは関数 p(h)で記述できる)は定数 c とほぼ同じ大きさにすることができる。しかしαが黄金比と同値でなければ、鱗の大きさは定数 c より真に小さくなければいけない。なわち、鱗の間の最小距離を最大になるのは、αが黄金比と同値であるとき、そしてそのときだけ、である(パイナップルは Max Min 原理を好む)。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

(1)上に述べた問題「葉序のパターンとフィボナッチ数列の関連」については
つぎの2つの学会発表を行い,またプレプリントにまとめた。
ISM Symposium “Stochastic Models and Discrete Geometry”, February 19-20, 2009 in Tokyo
  Y.Isokawa “Voronoi Diagram generated by Fibonacci Sequence”
15th Workshop on Stochastic Geometry, Stereology, and Image Analysis, March 22-27, 2009 in
Blaubeuren (Germany)

(2)なお上に述べた問題と無関係であるが,多面体を畳み込む問題に関連して,つぎの啓蒙的な性格の論述を行った。これは,伝統折り紙『風船』の可能性(厳密な)と,多面体に関するコーシーの古典的定理,とが一見すると矛盾しているが,この矛盾をどのように解決したらよいかを示したものである。
磯川 「折り紙『風船』の秘密」 鹿児島大学教育学部教育実践紀要 2009 年特別号

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

種村 正美

統計数理研究所