平成262014)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

26−共研−2004

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

3

研究課題名

近赤外線スペクトロスコピーによる反復性経頭蓋磁気刺激法前後の脳活動計測と治療効果評価法の開発

フリガナ

代表者氏名

キクチ センイチロウ

菊地 千一郎

ローマ字

Kikuchi Senichiro

所属機関

自治医科大学

所属部局

精神医学講座

職  名

講師

配分経費

研究費

40千円

旅 費

5千円

研究参加者数

3 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

軽度から中等度のうつ状態である精神疾患患者11例に、反復性経頭蓋磁気刺激法(rTMS)を施行した。rTMSは1クール10回として、1週間に3~4回施行したため、治療期間は3週間になる。治療前と治療1週目、2週目、3週目の合計4回、近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)検査を施行した。rTMSは、マグスティムラピッドシステムMRS1000/30(Magstim Rapid社製)と70mmダブルコイルを用い、左背外側前頭前野に反復性に高頻度(本施設では運動閾値100%強度で1日1回あたり10Hzを1000発)刺激を、右背外側前頭前野に低頻度(本施設では1日1回あたり運動閾値の110%強度で1Hzを420発)刺激を行った。NIRSの関心領域は前頭前野を中心とした3x11プローブから求められる52チャンネルになる。刺激課題となる認知課題には、後だし負けじゃんけん課題(drRPS)を採用とした。あいこじゃんけんを対照課題とした。1回の検査は刺激課題と対照課題の11ブロックから成り立つ(刺激課題をSとして、対照課題をCとすると、CSCSCSCSCSCの順番で施行するブロックデザインである)。各ブロックは24秒なので、1回あたりの検査時間は24 x 11 = 264秒となる。検査における52チャンネルそれぞれの酸素化ヘモグロビン波形をNIRS-SPMを用いて解析した。解析には一般線型モデルを用い、それぞれのモデルとの回帰分析を行い、タスクの変動に最も関係が深いモデルとの係数betaと残差の比となるnormalized betaを活動の指標として、脳表上のカラーマップに表示した。
すると、治療前は右前頭前野優位の活動であったが、治療直後は左右ともに上昇し、治療2週目には低下した後、治療3週目にはやや上昇し左優位となった。
rTMSの治療経過に伴い、右優位が左優位となった。本来、うつ状態では左半球活動低下、右半球活動上昇が指摘されている。治療により活動がモジュレートされた後に、rTMSの刺激に伴った効果が反映されて左半球優位への逆転が認められたと考えられた。
rTMSは治療に伴う脳活動の推移を追跡できる可能性があるが、今回うつ状態の重症度に差が認められる。今後は重症度別の考察を進めていく必要があると考える。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

平成26年11月19日の第44回日本臨床神経生理学会、シンポジウムにおいて予備的結果として報告された。今後平成27年6月の第111回日本精神神経学会学術総会、および第17回日本ヒト脳機能マッピング学会にて発表予定である。

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

平成26年12月2日の自治医科大学精神医学教室内集談会(参加者30名程度)、および平成26年12月6日前橋で行われた第1回精神生理研究会(参加者10名程度)で「ステート・マーカーとしてのNIRSの精神科臨床応用」のテーマで発表された。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

石黒 真木夫

統計数理研究所

三分一 史和

統計数理研究所