平成252013)年度 一般研究1実施報告書

 

課題番号

25−共研−1008

分野分類

統計数理研究所内分野分類

a

主要研究分野分類

7

研究課題名

マーケティング分野におけるベイジアンモデリングを用いたビッグデータ高度利用のための研究

フリガナ

代表者氏名

サトウ タダヒコ

佐藤 忠彦

ローマ字

Sato Tadahiko

所属機関

筑波大学

所属部局

ビジネスサイエンス系

職  名

准教授

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

マーケティングの現場では,個人の購買行動の結果である大規模データの蓄積が進展している.それに呼応する形で,マイクロ・マーケティングと呼ばれる戦略が非常に注目されている.マイクロ・マーケティングは,これまで幅広く活用されてきたマス・マーケティングと呼ばれる戦略に対するアンチテーゼとして生まれた概念で,消費財メーカーや小売業などのマーケティングの1つの方向性を示している.しかし,これら施策の実現に求められる個に特化した情報抽出といった技術的側面の課題と実際にそれらを実現するために必要となるコスト的課題の両面で,小売業におけるマイクロ・マーケティングの進展は限定的になっている.ただし,これまでと同じ枠組みで小売業の生産性を向上することは,現実問題として大きな困難があり,マイクロ・マーケティング的視点での施策の高度化が重要である.その際,前述した大規模データを前提とした「個に特化した情報抽出技術」は必要不可欠であり,それらの手法の開発は実務サイドから学術サイドに強く期待されている.
マーケティングで蓄積の進むデータは,データそのものは大規模であっても,ある個人の特定商品に限定した購買といった行動の発生頻度は少数に留まるため,その高次活用のためには、少数例の扱いと大量データの扱いを融合させた解析技術・理論の構築が急務である.さらに,小売業のある特定の店舗に限定して考えても全体として特性値数が数万(アイテム数かける属性数)あるにもかかわらず,それらの個々を購買している人の数は数百〜数千人であるため,n<<p(n:人数,p:特性値数)という状態で推論が要求される「新NP問題」が発生する.すなわち,マーケティングの現場課題の解決には,全体としては大規模データであるにも関わらず,妥当な推論のためにはデータが不足する状況が生まれている.これは従来の統計的手法では解決困難な問題で,新たな統計的手法の進展が必要不可欠である.このためのキーとなる統計技術がベイジアンモデリングである.ベイジアンモデリング技術を用いれば,不完備な「個」に関する情報により構成される大規模データを活用することで,不足する情報を埋めることが可能であり,上述のような問題に対して対応できる.
また,前段で示したように大規模データであったとしても,消費者の行動に至る要因に関して,全てデータとして観測できるわけではない.しかし,消費者行動理論に数多く示されてきているように,「消費者の嗜好とその変化」,「消費者の態度とその変化」,「消費者が直面する内的状況」など,消費者に内在し観測できない要因がその行動に強く影響する.観測されるデータに加えてこれら潜在構造の影響をも考慮した形式で消費者の行動を評価できて初めて,実フィールドで高度に活用可能な情報になりうる.これまでの小売マーケティング研究では,消費者の小売業での様々な行動に本来内在する動的な構造は積極的にモデルに取り入れられてきていない.また他にも,上述した大規模データからの人間行動の動的特性と消費者異質性を同時に勘案した現象の解明のためのモデル化には,手をつけられていない部分が数多く存在する.今後,消費者行動を解明し,効果的なマーケティングを行うためには,上記に示すような人間行動の詳細なモデル化が必要不可欠である.当該研究では,学術的アプローチと実務的アプローチを融合する形式で,実践的に活用可能な,これまでマーケティング研究では明らかにされていない消費者行動を解明することを狙いとして行う.
上記の目的に沿って研究を進めており、いくつかの成果を出せているが、共同研究の枠組みを利用させてもらい、継続して研究を進める予定である。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

【学会発表等】
・青柳憲治、佐藤忠彦:「3階層多変量状態空間モデルによる動的市場反応分析」、日本マーケティング・サイエンス学会、 2013年12月7日、(株)電通
・佐藤忠彦、照井伸彦:「ブランド選択における受動的消費者学習の影響」、研究集会「マーケティングサイエンスの新基盤ー新たなパラダイムの実現を目指してー」、2014年3月14日、 筑波大学東京キャンパス
・佐藤忠彦、照井伸彦:「来店・非購買時の影響を考慮したブランド選択モデル」、研究集会「第14回ノンパラメトリック統計解析とベイズ統計」、2014年3月20日、慶応大学三田キャンパス

【論文発表】
・佐藤忠彦、樋口知之:「 ビッグデータを用いたマーケティングモデルーデータ同化適用の可能性」、シミュレーション、Vol.32、No.4、20 14、306ー312


研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

実施していない

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関