平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−77

専門分類

7

研究課題名

神経難病患者における臨床ケア情報の統合化

フリガナ

代表者氏名

オオノ ユウコ

大野 優子

ローマ字

所属機関

(財)東京都神経科学総合研究所

所属部局

社会医学研究部

職  名

主任研究員

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

4 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

臨床患者情報は定性・定量、画像、離散・連続、観察間隔の不定期性と多くの様相をもつ。さらに、現在導入されつつある住宅看護では、複数の異なる職種間の情報伝達、在住で使用するME機器のメンテナンスなど新たな課題を含んでいる。神経難病は高度に医療依存しつつも在宅看護のニーズが高い。本研究ではこの神経難病患者を対象に包括的な臨床ケア情報システム構築を試みたい。


本年度は、大規模疫学調査および患者受療経過追跡調査をもとに、神経難病患者の受療実態を明らかにし、臨床ケア情報システムに必要な基礎資料を得た。
(1)東京都特殊疾病(難病)患者実態調査解析 東京都衛生局が平成2年度に当研究室と協力して実施した、東京都特殊疾病医療費受給対象者34,156人全数を対象としたアンケート調査より、難病として経過が特徴的な神経系3疾患と膠原系3疾患の患者について、受療経過を分析した。
その結果、1.罹病期間の長短に関わらず、要介護者および入院患者が一定比率存在する。2.在宅患者にも、中心静脈栄養、人工呼吸器、膀胱カテーテル留置、気管切開など、医学的な処置が導入されている。3.在宅患者のほうが、何らかの介護を要する患者の比率が入院よりも多い。などを明らかにし、看護主体の療養支援システムの必要性を示した。
(2)筋・神経系疾患専門病院の外来受診患者の受療経過追跡調査 1980年から10年間に筋・神経系疾患専門病院の外来を受診した274例中死亡例53例について、専門病院受診までの経過と、受診後の受療状況および、在宅診療利用者の特性を入院診療利用者と対照させ、明かにした。
その結果、他の医療機関を受診後1年以内に専門病院を受診する例が多いこと、在宅診療利用者に男性が多く、発症時期が若く、罹病期間が長いこと、人工呼吸器装着者は入院、在宅ほぼ同数(8例:9例)いたこと、など明かにし、長期療養施設などの受療支援システムの開発・維持、在宅人工呼吸管理システムの開発に課題があることを示した。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

大野ゆう子、他 運動ニューロン系疾患患者の受療経過からみた専門病院の役割、日本プライマリ・ケア学会誌、15(3),1992
川村佐和子、他 延べ1423人で支えた神経ベーチェット患者・3年9ヵ月の在宅ケアI〜VI、看護学雑誌、56(4〜9),1992
牛込三和子、他 長期(在宅)人工呼吸看護のあり方、 日本呼吸管理学会誌、1(1),1992
大野ゆう子、他 筋萎縮性側索硬化症の受療経過に関する研究、厚生省特定疾患「難病のケア・システム」調査研究班平成3年度報告書
大野ゆう子、他 難病のケア・システム構築のための基礎的研究その1〜3、日本公衆衛生学会、1992,10.21〜23
牛込三和子、他 在宅看護技術の開発に関する研究、厚生省特定疾患平成4年度第2回班会議 1993,3.1〜2
川村佐和子、他 神経筋疾患を対象とした長期療養施設・機能とそのあり方に関する研究 同 1993,3.1〜2

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

臨床定性情報の基盤となる看護系情報の整理・記録について、末期がん患者および在宅患者を対象に共同研究させていただき、調査研究しにくい分野ながら、まとまりがみえてきた。この成果をもとに、次の段階として、在宅患者の中でも医療依存度が高く、人工呼吸器など医用機器のニーズが高い神経難病患者を対象に、臨床ケア情報システムの構築へと研究を進めたい。
罹病経過をケア・システムの観点から解析するためには、日毎の状態推移、治療形態からみた病態変化、家族・周囲などの状況把握が必要であり、時系列情報処理(医用機器データを含む)、定性的パタン分類、状態評価法の設定など、既存の手法だけでは扱いの困難な問題を含んでおり、ぜひ、統計数理研究所との共同研究として実施いたしたく、お願い申し上げます。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

牛込 三和子

(財)東京都神経科学総合研究所

川村 佐和子

東京医科歯科大学

駒澤 勉

統計数理研究所