平成41992)年度 共同研究実施報告書

 

課題番号

4−共研−58

専門分類

7

研究課題名

胸部X線CTによる肺内病変の定量的自動診断法の開発

フリガナ

代表者氏名

クノ ケンシ

久野 健志

ローマ字

所属機関

京都大学

所属部局

胸部疾患研究所

職  名

教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

0千円

旅 費

0千円

研究参加者数

8 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

最近、胸部X線CTにによる肺内病変の診断に対して、CT値の平均値や標準偏差を求め、定量的に病変の進行度を診断しようという動きがあるが、病態の把握に必要な病巣の空間分布様式の評価はなされておらず、またこれに不可欠な読影の自動化は未開発の分野であった。私共は、平成3年度に引き続き、胸部CTによる肺疾患の病態の定量的自動診断法を検討したい。


前回の共同研究に引き続き慢性肺気腫(Chrconic Pulmonary Emphysema:CPE)患者の胸部X線CT画像において病変部位に相当する低吸収領域(Low Attenuation Areas: LAA)の空間分布について解析をおこなった。今回慢性肺気腫群、気管支喘息群、対照群の個々の症例について-960 HU以下の連続した低吸収領域をCLA(Continuoust Low Attenuation Areas)とし、その分布の自己相似性を検討するために大きさの頻度分布を解析した。大きさを横軸にとり、それよりも大きなCLAの数を縦軸にとるとすべての症例において両対数グラフにおいてきわめて高い直線相関を示した。
(r>-0.985)これはCLAの分布がベキ乗関数に従っているということであり、自己相似性およびフラクタル理論と密接な関係のある事を示唆している。また最小自乗法によりグラフ上の回帰直線の傾きを求めたところ慢性肺気腫群、気管支喘息群、対照群の順に大きく3群間で有意差を認めた。
また、この傾きは低吸収領域が肺の領域に占める割合に強い相関を示しており病変領域が成長していく過程において何らかのメカニズムによりCLAの大きさの頻度分布が決定されているものと思われる。この大きさを制限する因子として肺内の繊維性結合組織の構築、肺小葉の構造などが考えられるが、気道の直径と長さの関係はフラクタルであることが知られており、これがCLAの大きさの頻度分布と関係している可能性もあり興味深い。


 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

酒井直樹,胸部CTにおける低吸収領域の分布に関する研究,日本胸部疾患学会総会,平成5年4月9日発表予定
酒井直樹,An Analysis of the Size and Number of Low Attenuation Areas on Computed Tomography Using Fractal
Geometry,1993 American Thoracic Society International Conference,平成5年5月19日発表予定

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

平成3年度は、慢性肺気腫病変に対してtexture analysisによる病巣の2次元分布の解析を行い、成果を納めつつあるが、平成4年度は、空間分布の解析をさらに押し進め、これを3次元に拡張し、また伸展固定肺の病理組織像との対比を行い、慢性肺気腫の発生や予後の予測等の臨床応用に対して本法を有用なものとしたい。
また、肺繊維症等の他の病変に関しても同様の解析が有用であると考えられるが、肺のCT値が高くなる病変が存在する場合、現在の方法では、肺と胸郭の境界面を認識する事が困難であり、肺実質を自動認識するためには、より高度な画像認識機能を持たせなければならない。
以上のような高次の空間配置様式の解析・画像認識を必要とする本研究において、統計数理研究所との共同研究は不可欠であると考えられる。


 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

川上 賢三

京都大学

酒井 直樹

京都大学大学院

杉浦 直治

京都大学大学院

種村 正美

統計数理研究所

平井 豊博

京都大学大学院

福永 隆文

西京都病院内科

三嶋 理晃

京都大学