平成262014)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

26−共研−2085

分野分類

統計数理研究所内分野分類

j

主要研究分野分類

8

研究課題名

マングローブ林における生態系サービスの定量評価

フリガナ

代表者氏名

コノシマ マサシ

木島 真志

ローマ字

Konoshima Masashi

所属機関

琉球大学

所属部局

農学部

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

164千円

研究参加者数

4 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

近年,地球温暖化や津波・高潮などに伴う被害の増大により,マングローブ林の炭素固定機能や津波からの被害軽減効果などの生態系サービスに対する期待が高まりつつある.しかし,熱帯・亜熱帯地域の多くの国々では,これらの生態系サービスに対する過小評価が原因で,マングローブ林が農地や居住地など他の土地利用形態に改変されている.マングローブ林の持つ生態系サービスを定量的に評価することは,適切な価値評価に繋がるため,マングローブ林からの生態系サービスを持続的に享受するためには,重要な課題である.また,立木密度や樹木の大きさが異なるマングローブ林の生態系サービスを定量的に評価できれば,管理に有効な情報提供に繋がる.近年,様々な地域においてマングローブ林の生態系サービス定量評価の研究が進められているが,まだ沖縄本島のマングローブ林の炭素固定量データは少なく,津波や高波に対する効果についての定量評価の研究も少ない.そこで,本研究では,沖縄県名護市大浦湾に生育するマングローブ林を対象に,立木密度の異なる2つの調査プロットにおいて炭素固定量および津波に対する抵抗力を評価・比較し,立木密度などの違いによりこれら生態系サービスにどのような違いがもたらされるのかについて検討する.

本研究では,立木密度が異なるが,互いに近隣に位置し,環境が均一でオヒルギ(Bruguiera gymnorrhiza)が優占して生育している箇所を選び,20mx20mのプロットを2つ設置した.コンパス測量によりそれぞれの立木位置を明らかにし,樹高と直径を測り,磁気を利用した3次元位置測定装置で,樹木の3次元データを収集した.炭素固定機能に関しては,今回収集したデータに対して,Komiyama et al. (2005)が開発した相対成長式を用いて,地上部と地下部のバイオマス量を推定した.津波に対する抵抗力については,3次元化したデータを用いて抵抗係数(C_(d-all))を求めた.抵抗係数は物体の抵抗力と摩擦力を定量化する式で求められる.今回調査したプロット1は50本,プロット2は110本の樹木があり,直径の平均はそれぞれ15.1cmと9.8cmであった.バイオマス量はプロット1の方がプロット2よりも大きくなった.同様に,抵抗係数は各プロットの平均値で比較するとプロット2よりプロット1の方が大きいという結果になった.更に,曽・田中の研究で明らかにされたモクマオウ,ココヤシ,アダン族の一種の抵抗係数や飯村ら(2009)のフタバナヒルギの抵抗係数と比べて,本研究のオヒルギの抵抗係数は小さいことが分かった.これらの結果から,バイオマスをより効果的に蓄積するためには,立木密度を適切に管理することが重要であること,津波に対する抵抗力については,直径が大きいだけでなく,フタバナヒルギやアダン族の一種のように複雑な気根が発達している樹木の方が好ましいことが示唆された.本研究ではオヒルギの地上付近の根部分と幹上部分のみから抵抗係数を算出しているため,地下部の影響が十分に考慮されていない.今後,根部分や葉層部分を計測することで,抵抗係数の評価精度を上げることが可能と考えられる.これに関しては3次元位置計測装置を用いることでより詳細な樹木の形状データ,根部分のデータが収集可能であり,このようなデータの収集と蓄積は今後のマングローブ林の管理・保全をしていく上で有効な情報提供に繋がると考えられる.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

特になし

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

特になし

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

加茂 憲一

札幌医科大学

吉本 敦

統計数理研究所

Razafindrabe Bam Haja

琉球大学