平成182006)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

18−共研−2054

専門分類

9

研究課題名

木材市場価格パネルデータを用いた価格リスク及び森林管理リスク評価

フリガナ

代表者氏名

ヨシモト アツシ

吉本 敦

ローマ字

Yoshimoto, Atsushi

所属機関

東北大学

所属部局

大学院環境科学研究科

職  名

助教授

所在地

TEL

FAX

E-mail

URL

配分経費

研究費

50千円

旅 費

130千円

研究参加者数

5 人

 

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

1.研究の目的:
 ポスト京都議定書の議論が始まり,地球温暖化防止に向けた森林資源の持続的管理が益々重要視されている.その一方,ここ数年,日本における現状の森林を取り巻く経済環境下では,再造林の放棄あるいは間伐などといった管理そのものの放棄が問題視されている.平成17年に入り,熊本県にて大規模森林伐採及びその後の植林放棄が新聞紙面上大きく取り上げられるまでに至った.管理が不十分な森林では炭素固定機能などと言った森林が持つ公益的機能が十分発揮されないからである.管理放棄の背景には,将来的な価格のリスク,台風被害などと言った気候リスクに対する森林所有者の回避行動があるものと想定され,持続的森林資源管理の達成には,そのようなリスクに対する森林所有者の管理行動を把握し,森林資源に対するリスク管理を行うことが必要不可欠である.本研究では,持続的な森林資源管理を達成すべくリスク評価モデルを構築し,価格リスクの経済的な評価を行った.
2.研究の成果:
 まず,福岡県森林組合連合会浮羽事業所の原木丸太市場において,スギ・ヒノキ丸太の多品種価格データを収集し,データベースの構築を行った.データの記録は1970年4月から市日毎に2007年3月までである.同時に全国レベルの平均価格の収集も行った.平均価格データは1970年から74年までは年次データであり,それ以降は月次データとなっている.
 次に,構築した価格データベースを用いて,スギ・ヒノキ丸太価格に対し,平均回帰プロセスの一つである幾何Ornstein-Uhlenbeckプロセスの係数値を,疑似最尤法を用いて推定した.推定では,平均回帰を仮定するために,係数を指数変換し,係数符号を固定した.また,係数推定値の安定性を見るために,データ期間長を変えた場合も検討した.推定の結果,全国平均の価格データを使用した場合,回帰平均値はゼロになる場合があることが分かったが,市場価格データを使用した場合は,数値の変動はあるものの,回帰平均値がゼロになることはなかった.また,市場価格データの場合,推定するためのデータ開始時期を早めるに従い,回帰平均値が減少していることが分かった.このことは,近年の木材価格の長期的な減少傾向を反映したものと考えることができる.
 最後に,回帰平均値がゼロになる場合はあるものの,全国平均値のデータはあくまでも全ての価格データのサンプルであるため,全国平均値データ用いて事前に回帰平均値を仮定した場合について,持続的に森林資源管理ができる価格閾値の探求を行った.なお,探求には上記幾何Ornstein-Uhlenbeckプロセスを仮定し,確率動的計画法により,森林資源管理最適確率制御モデルを構築した.分析の結果,以下のことが分かった.1)伐採費用の増加に伴い,価格閾値も増加する.2)回帰平均値の増加に伴い,価格閾値は減少する.3)回帰平均値の増加に伴い,価格ボラティリティも増加する.4)現在の価格が価格閾値に近づくと,伐期齢が増加し,経営放棄の予兆が出てくる.

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

論文:
二宮嘉行・?原宏和・吉本 敦, 非正則な統計モデルに基づく林分成長分析, 森林資源管理と数理モデル, Vol.6.: 43-56, 2007

学会発表:
Yoshimoto, A. & Yukutake, K., Threshold Price as Economic Indicator for Sustainable Forest Stand Management, Conference on Indicators for sustainable forest management in cultivated forests, Dec. 11-13, 2006
Yoshimoto, A., Analysis on the reverted mean of log price dynamics through stochastic modeling, The 7th Symposium −FORMATH KOBE 2007 INTERNATIONAL−, Mar. 17-18, 2007

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

上野 玄太

統計数理研究所

加茂 憲一

札幌医科大学

二宮 嘉行

九州大学

柳原 宏和

広島大学