平成272015)年度 一般研究2実施報告書

 

課題番号

27−共研−2061

分野分類

統計数理研究所内分野分類

f

主要研究分野分類

8

研究課題名

大規模な環境・生態データのホットスポット検出に関する研究

フリガナ

代表者氏名

イシオカ フミオ

石岡 文生

ローマ字

Ishioka Fumio

所属機関

岡山大学

所属部局

大学院環境生命科学研究科

職  名

准教授

配分経費

研究費

40千円

旅 費

121千円

研究参加者数

7 人

 

 

研究目的と成果(経過)の概要

Echelon解析法は,緯度経度などの位置情報が付与された領域上の値と,その各領域間の連結情報に基づいて,空間的な位置を表面上のデータの高低に基づき分割し,階層型樹形図(デンドログラム)によってその位相的な構造を系統的かつ客観的に表現する解析法である。栗原・石岡らは,このデンドログラムの上位階層から優先的にホットスポット(クラスター)探索していく手法を,echelonスキャン法として確立している。本研究では,森林・生態系データのような環境データに対して,echelon解析法を利用した新たな知見を得ることを目的とした。

森林データへの適用に関しては,昨年度に引き続き,群集生態学が専門の共同研究者の久保田康裕先生(琉球大学)から提供いただいた森林群集の空間分布データを用いて,同じく共同研究者で生態系の空間統計学を中心に研究している小田牧子先生(防衛医科大学校)主導のもと,一連の解析を行った。
問題提起として,森林は似通った樹齢の樹木が小さな集団(パッチ)を成し,様々な樹齢階級のパッチがモザイク構造を成している。このパッチ単位であれば,森林の動態を現実的な期間で捉えることが可能になる。そのためには,パッチを同定する必要があるが,一般的には種数や空間スケールに依存して主観的に評価されているのが現状である。パッチ同定を定量的に評価するための先行研究として,小田ら(2012)は,echelon解析法を用いた森林のパッチ同定法を提案している。この手法は,樹木の位置情報をポイントデータと見なすことでechelon解析を適用可能にし,その結果得られる階層構造の上位に属する樹木群をクラスター(パッチ)とみなすものであった。本研究では,得られた階層構造に基づいてスキャン統計量を適用することで,パッチの定量的な評価を行った(小田 他, 2015)。さらに,提案手法の実用化に向けて,知床半島(北海道北東部),北茨城市(関東),霧島(鹿児島南部)といった異なる気候帯に属する森林調査間において提案手法によるパッチ同定法を適用し,その比較を試みた(小田 他, 2016)。その結果,霧島は他の地区と比べて大きくまとまったパッチが抽出されないなど,地域差が見られた。これは,樹木の種類・年齢が関係していることが可能性として考えられる。今後も森林生態学の専門家であられる共同研究者の久保田先生,同じく共同研究者の楠本聞太郎先生(統計数理研究所(申請時),琉球大学(現))を交えて,これら定量的に得られた結果の検証を行い,加えて手法の改良についても検討を続けていく。

また,同様のパッチ同定手法を,フィンランドのウツヨキ川に生息するサーモンの稚魚に対する生息場適正指数に応用した。生息場適正指数は,サーモンにとって生息のしやすさを指標化したものであり,河川の深さ,流速,川底の石の大きさなどから算出される。本研究では,レーザーとソナーの2種類の測定システムによって算出された生息場適正指数の違いを同じ土俵で比較するための新たな試みとして,これら2種類の異なるデータを同じ空間内に落とし込み,同時にechelon解析を適用する手法を提案した(Oda et al, 2015)。その結果,ソナーによる測定システムの方に尤度の大きいパッチが同定された。

 

当該研究に関する情報源(論文発表、学会発表、プレプリント、ホームページ等)

小田牧子, 久保田康裕, 楠本聞太郎, 石岡文生, 栗原考次. (2015). スキャン統計量を利用した森林帯の評価. 日本計算機統計学会 第29回大会講演論文集, 113-114.

Makiko Oda, Saija Koljonen, Fumio Ishioka, Petteri Alho, Hiroshi Suito, Timo Huttula and Koji Kurihara. (2015). A novel approach for comparing spatial data obtained by different measurement systems. The 9th Conference of the Asian Regional Section of the International Association for Statistical Computing, IASC-ARS2015, 36.

小田牧子, 久保田康裕, 楠本聞太郎, 正木隆,石岡文生, 栗原考次. (2016). パッチベースでの森林の比較について. 第127回日本森林学会大会学術講演集, 214.

研究会を開催した場合は、テーマ・日時・場所・参加者数を記入してください。

研究会の開催は行っていない。

 

研究参加者一覧

氏名

所属機関

小田 牧子

防衛医科大学校

楠本 聞太郎

統計数理研究所

久保田 康裕

琉球大学

栗原 考次

岡山大学

椿 広計

統計数理研究所